インナーゲームに対する疑問
前ページまでに述べたインナーゲームに対する疑問はいろいろと考えられるが、大きくは次の2つに集約されるだろう。(1)インナーゲームとは要するに思考放棄を促しているのか? だとすれば、それは音楽演奏には向かない理論ではないか。なぜなら、楽器演奏というのはあくまで意思の力で楽器をコントロールすることであるからだ。身体を意思の支配下に置かずに、どうして楽器が演奏できるのだ?
(2)インナーゲームがセルフ1の問題点を指摘していることは理解できた。しかし、人間にとって「考えない」ということは不可能ではないか? 悟りを開いたお坊さんではないのだ。どうやればそんなことが可能になるのか? そこに答えない限り、インナーゲームは絵に描いた餅のような理論ではないか。
まず、(1)については、先にも述べたとおり、インナーゲームは個々人が「やって、確かめる」以外に答えが出ない(つまり、科学的な証明は不可能)理論だと私は考えている。
とはいえ、理論的にその答えに迫れないこともなく、私もそのことに興味があるので、この記事の続編Part2として、インナーゲームの理論的な側面について考察する予定だ。こちらは興味のある人に読んでいただければよいと思う。
一方、(2)については、インナーゲームが、極めて具体的な方法論をもった「ゲーム」であるということが、お答えになるのではないか、と考えている。こちらについては、12月アップ予定のPart3をご参照いただきたい。
演奏家のための「こころのレッスン」―あなたの音楽力を100%引き出す方法 バリー・グリーン、ティモシー・ガルウェイ (著), 辻秀一、池田並子、丹野由美子 (翻訳)。音楽之友社、2005年。 |
また、インナーゲームを楽器演奏に生かそうという試みは、『演奏家のための「こころのレッスン」』という本で展開されている。もし、本稿を読んで、本格的に取り組みたいと思う人がいたら、こういった本を参考にされるのもよいかもしれない。
※本稿の前編、続編は以下のとおり!
「インナーゲーム オブ ジャズ Part1」
インナーゲームの理論的側面について分析する!
インナーゲーム オブ ジャズ Part2」
インナーゲームの理論的側面について分析する!
インナーゲーム オブ ジャズ Part3」
インナーゲームを演奏・鑑賞に生かす具体的な方法論を解説!
●参考書籍 『新インナーゲーム』
『演奏家のための「こころのレッスン」―あなたの音楽力を100%引き出す方法(原題:The Inner Game of Music)』