秋の夜、彼女と２人で聴きたいジャズ(4ページ目)

心も身体もとろける。秋の日の午後

■渋谷毅『Afternoon』

渋谷毅『Afternoon』 2002年リリース。渋谷毅、珠玉のソロピアノ集。たった１日で録音したとはとても信じられない、ハイクオリティかつ、落ち着いた演奏の数々。オーケストラを聴く時にも、このピアノ世界との対比を楽しんでほしい。

さて、最後にご紹介するのは日本ジャズ界の大御所、渋谷毅のピアノソロアルバム。周波数分析にかけると、１音１音が芸術的といってもいいような、丸みを帯びたカーブを描くという渋谷のピアノは、α波ミュージック的な心地よさと、ジャズ＆ブルースの情熱を共存させてしまうところにその真骨頂がある、と私は考えております。

本作は渋谷と森山威男（ds）とのデュオアルバム「しーそー」の収録の２日目に収録されました。2001年3月、今は閉鎖されたソニー信濃町スタジオにおいて行われたその録音は、初日、鳴りが悪かったピアノの調整後順調に推移。２日目はかなりの時間を残して無事終了したといいます。

しかし、「終わらない」男が一人。「もう少し弾いていていいかな」

こうして、レコーディング「終了後」の午後、一音一音、いとおしむように紡がれた音の連なりが本作「Afternoon」です。柔らかい音の調べは、秋の陽だまりの午後にも、雨の降る夜長にも、人の心を静かに、静かに、静めてくれることでしょう。

今回のガイド記事はいかがだったでしょうか？　彼女と過ごす１枚、見つかりましたか？？