すべては身体に通じ 身体から日常が変わる
映画「甲野善紀身体操作術」 2006年12月に公開される、武術研究者・甲野善紀氏を追ったドキュメント映画「甲野善紀身体操作術」。スポーツはもちろん、音楽、ダンス、演劇、さらには宇宙飛行士まで、さまざまな分野に影響を与え続ける甲野善紀氏の一端を知ることができる作品。配給:アップリンク。(写真提供アップリンク。写真をクリックすると、映画の情報ページにジャンプします) |
これは、今年12月23日公開の映画「甲野善紀身体操作術」に寄せた、解剖学者・養老孟司氏のコメントだ。
甲野氏の探求する身体操作術は、武術にとどまらず幅広い分野に影響を与えてきた。桐朋高校バスケットボール部やプロ野球の桑田真澄投手といったスポーツ分野はもちろん、楽器演奏、舞踏など、多くの分野のトップクラスで活躍する人々が「身体」を介して、甲野氏との交流を続けている。また、近年では介護福祉士の岡田慎一郎氏による「古武術介護」の取り組みを中心に、身体介護技術への応用にも強い関心が寄せられている。
この映画は、甲野氏の身体操作術を追ったドキュメンタリー。本人や、甲野氏から影響を受けた各分野の専門家たちへのインタビューによって、甲野善紀氏が探求する世界の全貌が、立体的に捉えられている。
冒頭に紹介した白川真理氏ももちろん出演。そのほか、演劇やダンス、その他幅広い分野の出演者たちが甲野氏の身体技法と、その発想のおもしろさを、立体的に浮き上がらせている。
率直で、不思議で、引きつけられる映画
試写会を見て、私が一番強く感じたのは「率直な映画だ」ということだ。もちろん、ドキュメンタリーであれば率直であることは当然なのだが、世にあふれる「ドキュメンタリー」は必ずしも率直ではない。感情移入が過ぎた演出や思いこみ、勘違いは、なかなか避けられるものではない。しかし、本作ではとにかく「甲野善紀」が、生のまま提出されている。説明はしない。とにかく見ろ、というメッセージが感じられる。そこにはしかし、youtubeなどの動画サイトで甲野氏の映像を眺めるのとは明らかに異なる意味がある。
「第三者の目に映った甲野善紀」を組み上げることによって、「甲野善紀の立体像」を見せる。本作に貫かれた強い意志が志向したのは、そのことではないか。
最後に、本作に登場する出演者たちの言葉を一部ご紹介しよう。これだけ異分野の人間が、それぞれの視点で言葉にすると、これほど多彩な甲野善紀像が出現するのか、と驚くばかりだ。
「甲野さんは元々厭世主義っちゅうか、いつか森に帰りたいっていうか、そういうロマンチストみたいなところがある人で、でも決してそれがなかなか上手くいかないんです」(精神科医・名越康文氏)
「やられてみて初めてわかると思うので、これはちょっと人に説明しづらいんじゃないかと」(格闘家・植松直哉氏)
「甲野先生はこういうことできたらいいなっていう、そういう憧れを与えてくれる。その憧れに対してみんな稽古していく」(介護福祉士・岡田慎一郎氏)」
「甲野先生の抜刀術を応用し始めたら5時間吹いても平気。20代のころは1時間吹いたらへろへろだったのに」(フルート奏者・白川真理氏)
あなたはこの作品を見終えて、どういう感想を持つだろうか? 関心を持った方はぜひ一度ご覧になって、自分の課題に、古武術の視点を取り入れてみてほしい。
●作品情報
『甲野善紀身体操作術』
監督:藤井謙二郎
出演:甲野善紀、名越康文、植松直哉、岡田慎一郎、中嶋章夫、たきいみき、ほか 製作・配給:アップリンク(2006年)
【公開情報・問い合せ】
2006年12月23日(土)よりUPLINK X(東京・渋谷東急本店右側路200m先右手) にて公開。順次全国各地公開予定。
Tel.03-6825-5503
【料金・割引情報】
一般1,500円、学生1,200円、シニア1,000円
※ 以下の条件で、一般の方も1,200円でご覧になれます。
・甲野書籍割引(甲野善紀氏の著作をお持ちの方) ・ 岡田慎一郎書籍割引(岡田慎一郎氏の著作『古武術介護入門』をお持ちの方) ・ 看護師・介護士・ヘルパー割引(免許のコピー等、資格を証明できるものをご呈示ください)
●関連記事・カテゴリ
ジャズ理論と楽器奏法