ジャズ/ジャズ関連情報

古武術と楽器演奏(2ページ目)

「古武術」と「楽器演奏」……両者を実際に結びつけようと試みているプロのクラシック演奏家がいる。12月公開の映画「甲野善紀身体操作術」をレビュー!

執筆者:鳥居 直介

古武術って何だ?

武術研究者・甲野善紀氏。NHKの「人間講座」ほか、多くのテレビ番組、雑誌などを通して、甲野氏の実践をご覧になったことがあるという方も多いと思う。

甲野善紀氏
甲野善紀氏
武術研究者。1978年、武術稽古研究会松聲館設立以来、他流儀や異分野(スポーツ、介護、演劇、ダンス、宇宙飛行士など)との交流を通し、失われた精妙な古伝の術理を探求しつつ、武術研究を行っている(写真が甲野善紀氏のホームページにリンク)。
筆者は、縁あって、5年前から甲野氏との交流を持たせていただいているが、その身体技法の深さと、変化の大きさ(3日会わないとまったく違う動きをされていることがある)には、いつも驚かされている。

白川氏とは演奏家としてのレベルは違うが、私自身も、甲野氏と出会ってから演奏の質が変化したと感じている。例えば、甲野氏がしばしば用いる「身体を割る」「同時並列的な身体運用」という表現は、ギターやドラム、ピアノ演奏などにおいて、左手・右手、あるいは指をバラバラに、同時に使う感覚に強く通じているように思う。

もちろん、身体をバラバラに、同時並列的に使う、ということそのものは、普通の楽器奏者でもやっている(やらなければそもそも演奏なんかできない)。

ただ、(批判を承知で書かせていただくと)そのことを「技」として、あるいは「術」として、精緻に鍛え上げていくということを、多くの楽器奏者が怠りがちである、ということは言えるのではないだろうか。

もっと豊かな音が出るのではないか? もっと、筋力負荷・肺負荷を減らした効率的な奏法はないのか? そうした疑問・欲求に対して、教科書やマニュアルに頼るのではなく、自身の身体との対話を通して探求していくこと。甲野氏が持つ飽くなき探求心が、私や白川氏の音楽家講座に参加するミュージシャンを刺激しているのだと思う。

とはいえ、甲野氏のおもしろさ、魅力を文章で伝えることはなかなか難しい。甲野氏の身体運用は、実際に見て、触って初めて納得できる質のものなのだ。しかしこのたび、甲野氏と実際に会い、技を体験する機会に恵まれていない皆さんにお勧めしたい作品が公開されることになった。映画「甲野善紀身体操作術」公開である。

→次ページでは、映画「甲野善紀身体操作術」公開情報を詳報!
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます