ライブハウスデビューのための6箇条
では、百聞は一見にしかず。ライブハウスに足を運んでみましょう。お店選びのポイントから店内でのマナーまで、「ライブハウスデビュー」にまつわる不安にお答えします。
■その1 近場のお店をチェック!
まずは「場所」。ライブハウス選びでは何より「アクセスの良さ」が決め手だとガイドは思います。自宅から近い、職場から近い、通勤の乗換駅の近く……なんでもいいのですが、とにかく「あなたにとって通いやすい」ということがすごく重要です。
なぜか? 1つのライブハウスには、同じミュージシャンが何度も出演します。月1回や週1回、定例として同じメンバーの演奏が行われるお店は少なくはありません。また、同じミュージシャンでなくても、そもそも出演ミュージシャンのセレクトをお店が行っている以上、ラインナップにはオーナーの趣味が色濃く反映されています。つまり、一度(あなたにとって)良い演奏が聴けたお店では、次もよい演奏を聴くことができる可能性が高いのです。ぜひ、あなたの「行きつけ」を見つけてください。
■その2 一晩おいくら?
ジャズに限ったことではありませんが、ライブハウスではチャージ料金というものを支払います。入店時に支払う場合もあれば、退店時にまとめて精算するシステムもあります。お値段は1,500~3,000円くらいが普通。例外的に8,000円なんてところもありますが、たいていはチャージ+ドリンク、おつまみを加算しても3,000-5,000円といったところが相場でしょう。
もちろん、これより安いところもあれば高いところもあります。また、レストランをメインにしているところもあり、そういったところはチャージ料金を低額に抑える傾向にあります。
余談ですが、このチャージ料金の何割かが、出演ミュージシャンへのバックとなるわけです。例えば20数人のお客さんが入った一晩のライブで、ミュージシャンの懐にいくら入るんだろう……てなことを考えてみると、チャージ料金って安いって、思いませんか?
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入れ替わり立ち替わり、プロアマさまざまなミュージシャンが登場するジャムセッションはライブハウスならではのお楽しみ。あなたも楽器片手に参加してみては?(京都blue note より)
■その3 ジャムセッションって、なに?
ライブハウスのホームページを見るとミュージシャンのラインナップの替わりに「ジャムセッション」と書かれている日があります。これは通常のライブとは異なり、アマチュアの皆さんが楽器を手にお店にやってきて、入れ替わり立ち替わり演奏していくというもの。
ジャズの歴史をひもとくと、ジャムセッションというのはジャズという音楽の方向性を決定づけた演奏形式といえます。もちろん、参加者はアマチュアが中心ですのでレベルはお店やその日によってまちまちですが、何が起るかわからないスリリングさを楽しめる人にとっては聴いているだけでも楽しいものです。
ただ、お客さんの半分以上が楽器を持った出演者ばかり、というシチュエーションは、初めての人にとっては違和感爆発かもしれません(笑)。何度か通ったことのあるお店であれば、マスターに「ジャムセッションってどんな雰囲気ですか」と聞いてみるのもいいでしょう。もちろん、楽器ができる方であれば、参加するのが一番です。
■その4 美味しい食事とお酒
ライブハウスは数あれど、ジャズライブハウスは総じて食事・お酒のレベルが高い、と経験的に感じます。もともとジャズ文化はお酒とともに育まれてきたものなので(下記記事参照のこと)、結果的にレベルが高くなったのではないかな、と思います。
ガイド記事「酒とジャズ」
お酒と食事が美味しいと、多少まずい演奏でも許せてしまうということもあります。特に、お勤めの皆さんは仕事を終えてからお店に行くことになると思います。開演時間はだいたい20時前後ですから、他所で食べてから来店できるかどうかは微妙なところ。行きつけの店は、できれば美味しい料理を出すところにしたいですね。
ただ、一方で老舗のジャズ専門のライブハウスの中には「とにかく音を聴け」ということで、料理・お酒は添え物的なお店も、ごくわずかですが存在します。ただ、こういうお店が日本の音楽文化を支えていることも事実です。
いずれにしても、料理とお酒の質を来店前に判断するのが難しいのは、普通のレストラン選びと同じ。当ガイドサイトの「お勧めINDEX」でも、お勧めのライブハウスをご紹介していますので、ご参照ください。
■その5 ミュージシャンとの交流
普通のコンサートホールだと、演奏を終えたミュージシャンは控え室に帰っていきます。しかし、ライブハウスでは何と客席に座ります。ジャズライブでは休憩を挟んでの2~3ステージが通常ですが、この休憩の間も、ミュージシャンは客席や、バーカウンターでくつろいでいます。なんて身近さ! 「世界の○○」なんて言われている人が、目の前でお酒なんかを飲んでいるのですから。
さて、こういう客席でくつろいでいるミュージシャンに声をかけてよいものかどうか。
もちろん、彼らはお客さん相手にぞんざいな対応をすることはありません。多くの場合、お客さんの反応というのはミュージシャンにとって喜ばしいモノであるはずであり、きっとにこやかに振る舞ってくれるでしょう。
しかし、一方で演奏というのは猛烈なエネルギーを消費する活動でもあります。その時、その状況にもよりますが、セット間の休憩くらいはゆっくりと休んでもらって、次の演奏に備えてもらったほうがよいかもしれません。
いずれにしても、ミュージシャンとのコミュニケーションの楽しみはライブハウスならではのもの。よいライブだったと感じたらぜひ、終演後に声をかけてみてください。
■その6 店内でのマナーって?
お店によってまちまちの「店内マナー」。ここでは、「手拍子」と「拍手」について、少し書いておきたいと思います。
まず、手拍子ですが、これは当然ながら、ミュージシャン、他のお客さんの迷惑になるケースがありえます。楽器演奏者でない人間が叩く手拍子は、しばしばミュージシャンの繊細なリズム感とずれをきたしていることがあり、そのように感じた人に不快感をもたらすことがあります。
一方、ソロ演奏の変わり目や、最後にテーマに帰ってくる頃にわき起こる拍手はミュージシャンの演奏に対する賞賛であり、悪いものではないはずなのですが、妙なタイミングの拍手のせいで「聴き所」をのがした(と考えた)お客さんが「イライラッ」とされることもあるようです。
ただ、手拍子にしても拍手にしても、自然と身体の中からわき起こってくるものである限りは、非難するものではないと私は思います。特に手拍子については、観客にそれを求めるミュージシャンもいるくらいですから、これはケースバイケースとしか言いようがありません。要するに、雰囲気を顧みずにめちゃくちゃな騒ぎ方をする人が迷惑だということであって、いわゆる世間的な「常識」を守っていればいいということでしょう。
実際、お店では「マナーを破ったらどうしよう」なんてビクビクする必要はまったくありません。リラックスして楽しんで頂ければいいと思います。
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