自宅のオーディオ、ライブハウス、ジャズ喫茶、ウォークマンやMP3プレーヤー……現在では、さまざまなメディアを通してジャズを楽しむことができる。でも、こんなふうにメディアが出そろってきたのは、ほんの数十年の間の出来事に過ぎない。
私たちは本当に、これらのメディアとの付き合い方を知っているのだろうか? メディアとの付き合い方はそのままジャズとの付き合い方にもつながるのに、私たちは案外メディアとの付き合い方を考えない。
シリーズ「ジャズ鑑賞のWhere & How」では、ジャズ鑑賞におけるこれらのメディアとの付き合い方を私なりに整理してみたい。
第1回は、私たちにとってもっとも新しいメディアである、HDDポータブルオーディオプレイヤーをとりあげる。iPodをはじめとするHDDポータブルオーディオプレイヤーはどんなふうに、ジャズ鑑賞の場で活躍できるのだろうか。
「iPodでジャズ鑑賞」の是非
apple社製HDDオーディオプレイヤー「iPod」。ジャズファンにとっても欠かせないツール?? |
疑問1 音質が悪いのでは?
やはり、このことが何よりもジャズファンの皆さんには気にかかるところだろう。結論からいえば、CDウォークマンの音質が許容できる人にとって、HDDポータブルオーディオプレイヤーの音質に問題はない。ただし、音楽データ保存時の音質設定によってはデジタル特有の「音の薄さ」が露呈することは否めない。HDDポータブルオーディオプレイヤーに保存する音楽データの代表がMP3だ。その音質(=圧縮率)設定はビットレートという単位で行う。通常、ネットの試聴などで流れているものは64-128kbps程度のものが多いようだが、これは試聴ならともかく、鑑賞レベルには達しない音質である。
それぞれのビットレートの音質を、私の主観に基づいて整理すると、以下のようになった。参考までにご覧いただきたい。
- 64kbps プレステのBGMなら許せる
- 128kbps 「音楽」には聴こえる。けれど、独特の「薄さ」がある
- 192kbps ほぼ許容範囲。ただ、シンバルなどは倍音がよく聴こえない感じがある
- 256-320kbps ほとんど問題なし
「簡単・手軽」というHDDポータブルオーディオプレイヤーの特徴を考えるなら、あまり音質こだわるよりは、沢山の曲を入れて、その利便性を優先させたほうがよいかもしれない。
次ページでは、HDDオーディオプレイヤーのメリット・デメリットを検証!