文章: 佐久間 啓輔(All About「ジャズ」旧ガイド)
“ジャズの聴き方”なんてものはモチロンありません。CDをデッキに入れて、再生ボタンを押すだけです。しかし、それでは面白さも半減。作品の背景にあるものや、エピソードなどを知ってこそ聴く楽しみも増してくるもんです。
ジャズ好きの友達と聴きながら、ああだこうだと言いながらお互いの解釈を披露しながら聴くのも面白いですよね。そこで今回はご存知マイルス・デイビスの『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』(1955・1956年録音)を例にとって、ワタクシの“ジャズの聴き方”をご披露させていただこうかと思います…
※ジャケット写真がAmazon.comにリンクしています。
このアルバムはモダンジャズの名盤中の名盤。ジャケット写真でいきなり圧倒されます。演奏の休憩中にカウンターでくつろぐイメージでしょうか、見かけてもとても声をかけられそうにありません。アルバムデータは以下の通りです。
マイルス・デイビス
『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』
1.ラウンド・アバウト・ミッドナイト
2.アーリューチャ
3.オール・オブ・ユー
4.バイ・バイ・ブラックバード
5.タッズ・デライト
6.ディア・オールド・ストックホルム
マイルス・デイビス(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
この作品はマイルスが当時の最大手コロンビアレコードと契約してリリースした第一弾。このチャンスを逃してはならないと、契約中だったプレステッジでのノルマ、4枚分のレコーディングを2日間で終わらせてしまいました。しかし、マラソンセッションと呼ばれるそのレコーディングは、当時のマイルスを等身大で記録したアルバムとして歴史に残る作品(以下の4枚)となったのです。
『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』はこのように満を持したかたちでレコーディングされました。黄金のクインテットと呼ばれるこのメンバーは、まさにジャズそのもの。モダンジャズの名盤で、この人たちの名前のないレコードを探すのは難しいほどです。では一曲ずつ聴いてみましょう。
1.ラウンド・アバウト・ミッドナイト
ジャズピアノの奇才セロニアス・モンクの作品。“ラウンド・ミッドナイト”とも呼ばれる曲ですが、これは後に歌詞をつけるとき“アバウト”が邪魔だったのでこう呼ばれるようになったそうです。イントロでいきなりマイルスの世界に引きずり込まれます。「卵の殻の上を歩くように」というのはここからきているのでしょう。
マイルスとコルトレーンのソロに入るキメは、アレンジの巨匠ギル・エバンスの仕事。その後に続くコルトレーンの起爆剤となるアレンジと言えるでしょう。
最後にまたマイルスが殻の上を歩く、完璧な起承転結の演奏です。
2.アーリューチャ
がらっと明るい雰囲気に。デキシーを思わせる曲です。 軽快なポール・チェンバースの演奏が印象的です。この人のベースは非常に乾いた音でこういった軽快なテンポの演奏が魅力的です。
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