「明」の場面が楽しい分、「暗」の場面が際立つ
物語のキーともなるMC役には、阿部サダヲ(中央)。抜群の存在感で観客をわかせた |
実は私、『キャバレー』は来日公演とブロードウェイで観劇していますが、その時は今ひとつピンと来なかったんです……。が、松尾演出は、随所にギャグを織り交ぜながら思い切り笑える作品にアレンジしている一方で、決して逆らうことのできない時代の波に身を任せざるおえない諦念や作品が持つえもいわれぬ退廃感をしっかりと残しています。もしかしたら、「明」の部分を思い切り盛り上げている分、より、2幕のラストが切なく心に染み入るのかもしれません。
ミュージカル初挑戦の松雪はセクシーな衣装を見事に着こなし、大人の色香を振りまいていました。阿部サダヲの芸達者ぶり、得意のダンスを披露する機会はありませんでしたが、森山未來の細やかな演技にも目を見張るものがあります。そんななかでも、ガイドが特に「ブラーバ!」と叫びたいのが、下宿人の女主人、シュナイダー役の秋山菜津子! 観る舞台ごとに、まったく別の人間になりきることができるすごい女優さんですが、今回もご他聞にもれず……。知らずに観ていたら、多分、秋山さんだと気付かなかっただろうなあ。
公演情報
東京公演(青山劇場)2007年10月6日(土)~21日(日)
名古屋公演(愛知厚生年金会館)10月26日(金)~28日(日)
大阪公演(大阪厚生年金会館大ホール)11月2日(金)~4日(日)
台本:ジョー・マステロフ
作曲:ジョン・カンダー
作詞:フレッド・エブ
演出:松尾スズキ
出演:松雪泰子、阿部サダヲ、森山未來、小松和重、村杉蝉之介、平岩紙 / 秋山菜津子 他