江戸歌舞伎を象徴するヒーローに注目
今月の歌舞伎座さよなら公演五月大歌舞伎では、市川海老蔵さんつとめる『暫 しばらく』がかかっている。
この『暫』というお芝居、ご覧になったことはあるだろうか。
ない方、これを機会にぜひ見逃さないでいただきたい。
これほど江戸歌舞伎の美意識、遊び心に溢れている演目はないからだ。
ドラマチックな義太夫狂言、すっきりとイキな世話物、賑やかな舞踊など、他のジャンルの歌舞伎演目ももちろん楽しいのだが、この歌舞伎十八番、江戸歌舞伎の代表である市川團十郎家の演目『暫』だからこそ味わえるスケールの大きさをぜひ堪能していただきたい。
なにしろ、面白いのだ。
ストーリーらしきストーリーはない。どちらかといえば「愛すべきバカバカしさ」に溢れている。その「愛すべきバカバカしさ」こそ、現代の観客にとって江戸の気分を感じ取る絶好の演目じゃないかとすら思う。
さっそく内容と見どころをご紹介する。