・役者の出入りが分かる。
板付(幕開け当初から舞台に立っていること)の役者がどんなタイミングで舞台に入ってくるのかが分かる。また、板付の役者同士、なにかしら段取りの打ち合わせしている様子も分かる(ただしこの席から舞台裏が常に観られるわけではない。桜席から本舞台が見えないように黒幕が落とされるタイミングもあるのであしからず)
・「大序」の鶴ヶ岡八幡宮の装置から、四段目の千畳敷の座敷の装置、塩冶家の屋敷の門扉まで、その装置を動かす様がよく見える。左半身は舞台を楽しみ、右半身で舞台裏を楽しめる。
・幕をどんなふうに開けていくのか、よく見える。また、舞台で、袖で、狂言作者がどのように柝を打つのかがよーく見えてこれも面白い。その柝がどんな磨り減り具合なのかまで見える。
・四段目では判官切腹がある。その幕が開く前に、若侍の一人が香炉の盆を持って本舞台を歩き回る様子が見られる。
その香の煙が舞台にいきわたり、このあとの悲劇をこの香りが盛り上げてくれる。通常歌舞伎座などの客席からは、ほんのり香るだけだったが、この桜席ではむせるくらいに香が充満する。
ちなみにこのお香は判官役者が用意するといわれている。
・舞台の真上には照明が取り付けられた一文字の黒い幕が何本もかかっている。その一つには雪や花びらを降らせる装置もついていて、そこからときどきヒラリと雪片が1枚落ちてしまったりする。
その様子を目の前で見た。だからなんだ、といわれればそれまでだが。
「大序」のシーンは鶴が岡八幡宮が舞台。脇には黄色く色づいた大銀杏があるのが、なぜかこの装置から雪片がヒラリと落ちた。
季節に整合性がなくなるが、なんとなく風情があったりするのだ。
・正面客からは常に観られているというのも桜席の特徴。
歌舞伎座の桟敷席も観られる席ではあるが、四六時中客席の視野に入っているわけではない。桜席は舞台の両袖についているので、常に観られているのだ。
なんとも不思議な感覚だ。
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