喧嘩っぱやい江戸っ子たちが勢揃い。もうそれだけで楽しい一幕
夜の部、おしまいの演目が『め組の喧嘩』。市川團十郎と尾上菊五郎がそれぞれ、相撲取りの親方、鳶の親分となって登場し、文字通り真っ向対決の演目だ。ちょっとしたトラブルがそれぞれの子分たちや家族を巻き込んでの大喧嘩に。ずらりと並んだ鳶や相撲取りたちに客席が囲まれて、まるで江戸の下町の大喧嘩のその現場に居合わせたかのような臨場感がある。
この、”大勢のかっこいい役者に囲まれる” 喜びは、他のエンタメではそうそう体験できない。”舞台に役者が大勢いる”なら他のミュージカルなどでも体験できるが、花道の威力(ときには仮花道---左右両側に花道を設ける場合)なのだ。そして歌舞伎の魅力もそこにある。
通称 め組の喧嘩 めぐみのけんか
本名題 神明恵和合取組 かみのめぐみわごうのとりくみ
作者 河竹黙阿弥 ほか
あらすじ
正月、品川の島崎楼の宴席でトラブルとなった相撲取りと鳶。相撲取りとの親方九龍山浪右衛門と四ツ車大八と鳶の藤松らが喧嘩になる。鳶頭のめ組の辰五郎はその場を収めるが、後日芝神明の芝居小屋で喧嘩が再燃。辰五郎は改めて、相撲取りたちと決着をつける決心をする。兄貴分の喜三郎に後を託し、女房からも励まされ、ついに相撲取りたちと鳶たちの大喧嘩が始まる。だが喜三郎の機転で無事喧嘩は収まる。