歌舞伎/歌舞伎関連情報

今度の『小栗判官』は昼夜二部に。1(3ページ目)

国立劇場の3月の演目は、『当世流小栗判官』。「猿之助十八番の内」と銘打ってあるように市川猿之助一門の役者陣による中世の物語を基にしたスペクタクルとロマンにあふれる長編の舞台だ。

執筆者:五十川 晶子

●「二部に分かれたけど?」「二部ならではの観どころは?」

補綴・演出を担当した石川耕士は、製作発表の場でこう語る。
「”猿之助十八番”の作品にはこれまで13本ほど関わってきた。『小栗判官』に関しては上演するたびに”今回こそ完全版にしたい”と、猿之助さんから注文をもらっていた。一方でここ10年、若手がめきめきウデを上げてきている。猿之助さん一人が頑張らなくても大丈夫になってきた」と語る。

以前は猿之助による早替りを盛り込むため、ドラマ全体としての完成度を犠牲にするケースもあったという。だが若手に役を任せられるようになり、「今回は、ドラマをより洗い上げることに目標をおきたい」(石川氏)。「猿之助十八番」と銘打った作品でも、他の役者でも面白い、作品としても楽しめる普遍的な内容を目指す。

さて今回は昼と夜の二部制。
「今まで一部のみ観れば済んでいたのが二部観なくちゃだめなの?時間もかかるし、もしかして割高じゃないの?」という声もなくはない。片方だけ観る人にとっては、「尻切れトンボにならないか」という危惧もある。

今回は一部、二部とも口上をつけることで、その不安に応えた。一部の口上では登場人物のバックボーンや関係を、二部の口上では一部の見せ場を断片的に紹介する予定という。

さらに、「『小栗判官』は、英雄譚のエピソード集という要素の強い作品であるため、どちらだけを観ても楽しめるはず」と石川氏。

「二部制になり時間の余裕ができたとはいえ、長いバージョンに戻すのではなく、分かりやすさのために今までカットしてきたことを丁寧に舞台にしたい。作品としてのアンサンブルも大事だが、(今回出演の)一人一人が、ストーリーを通すための道具ではなく魅力的に輝けるようにしていくのが、今回の私の補綴の目標でもあります」(石川氏)。

さて、役者達はどのような思いで臨むのか。
まずは製作発表時の役者達のコメントを<2>でどうぞ。

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