とにかく、不可思議でカッコよくて、ヒリヒリするロードムービーに仕上がっていたのがいい!(いや、ロードムービーってことすら、パロディになっていたような気も)
弥次さん(七之助)がつぶやく台詞じゃないが、ペラッペラの、芝居の描き割のような薄っぺらい江戸の世の中。そこにやっぱり風が吹けばペラペラと吹き飛ぶような存在でいる人々。
男も女も、殿様も職人も、駕篭もバイクも、ドラッグもお笑いも、怪しい新興宗教教祖も女子高生も、富士山もキノコも、魂も死体も、まるで等価のように一枚の大判のペラペラの紙(スクリーン)におさまっている。
元々原作に潜んでいたかもしれないそういう世界観が、宮藤官九郎というフィルターを通して映画でまっとうに視覚化されていた。映画でなければできないことって、そういうことなんだな、と改めて思う。(第一、あの「大人計画」の荒川良々の巨大な裸体がラシュモア山のように・・・・なんて映像は、舞台じゃお目にかかれないし。)
少なくとも筆者はその、なんていうんですか、ポストモダン?(あ、近世だからプレなのか?)とでも言いたくなるような?世界観をみて、原作の醸し出すあの世なんだか、この世なんだか、この世の価値がよく分からなくなっていくような印象が、なんだかものすごく腑に落ちたような気がした。