邦楽といっても「洋楽に対する邦楽」ではなく、まさに日本の伝統の楽器を使った音楽である。鼓や笛、三味線に、西洋音階とは異なる音階による各種のサウンドが、歌舞伎では用いられる。
太鼓がどーんどーんと響くと、これは実は雪がしんしんと降っている様子だったりする。川の流れや風の音が、舞台下手(左側)の黒御簾の内側にいる奏者が奏でる音で表現される。これら効果音として使われる場合はまだいい。意外に初めてでも、肌で理解できるはず。
問題は舞台に登場する長唄や、竹本や、常磐津などと呼ばれる人々の音楽じゃないだろうか。大雑把に分けると、「唄」と「語り」、もっと大胆に言ってしまえば「歌」と「ナレーション」なのだ。比較的高い声で歌い、さながらオーケストラ、ビッグバンド、といった趣きなのが長唄で、踊りの演目でもよくお眼にかかる。
三味線と語る人と二人出てきて、舞台の上手(右手)で演奏するのが竹本(義太夫)で、彼らは主に物語の語りを受け持つ。低く、喉を狭くつぶしたような声でうなるように語るからすぐ分かる。
三味線三人に浄瑠璃(語り歌う人)が四人などという編成で登場するのが常磐津。これも踊りの演目でよく観られる。太夫(語り手)が替ると声の高さや調子も替ったりする。一人の役者が複数の人物を演じ・踊り分けるときなど、ピタリとはまる。義太夫よりも高い声で華やかに語り歌う。
極端に言えばそんな違いを感じながら、「新しく体験する音楽」として聴いてみることをおすすめする。
だって実際、カッコイイんですね、これが。
「あ、この節回しはドリカムっぽい」「このうなり声はサザンのノリだな」「往年のブリティッシュロックを思わせるパーカッションと弦楽器のソロ」(ほんとか)・・・・なんて、好きなジャンルの曲と比べてみても面白いかも。例えば、ですけどね。
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