「舞台を造る」
●その次に、舞台を造っていく各専門の業者向けに発注書を作る。これは附帳(つけちょう)と呼ばれるが、どの演目でどの役者が何の役をやるということを詳細に書いた物である。これにより、各業者のプロ達はすべてを作っていってしまう。
たとえば衣装方は、その役者と役名を知り、役者の寸法、必要な古道具、衣装の色柄等を新たに作って行く。衣装の柄は基本的には決まっているが、当月の役者に合わせ、細かいアレンジはすべて衣装の職人が、自分の技術とセンスで作る。デザイナーをも兼ねているといえるだろう。また役者や役柄に対する膨大な知識と経験がなければ勤まらない。
かつら、道具方すべてこの方法でスムーズに舞台準備が進められていく。
また芝居の内容で立ち回りが必要であれば、例えば「15人で作って」ということを立師の役者に発注することもある。稽古をしながら、不都合等あれば、台本の修正はもちろん「お囃子をもっと伸ばして」など、音楽への注文も出す。
舞台の小道具から衣装はもちろん、芝居の内容に関わることほとんどすべては、狂言作者から発注されている。つまり、芝居を構成しているものが狂言作者により分類・分解され、それぞれ担当のプロにより造られ、それらが役者とともに舞台上で再構成されているといえるだろう。同時に興行と関わる面では、「宣伝」のパンフ等を造る現場へも演目や役者等の情報を送らなくてはならない。
西洋演劇の舞台製作では、演出部を中心としたメインスタッフにそれぞれデザイナーや照明プランナーが属しているが、歌舞伎ではすべて狂言作者を通ってそれぞれのプロへと注文がいくというシステムになっている。