物を書く
現在歌舞伎座等の狂言作者として活躍する竹柴源一さんに、現在の狂言作者の仕事についてうかがった。
「かつては、現代劇の作家と同じように、創作が狂言作者の仕事だったんです。ニュース性を盛り込んだり、話題性を作ったり。今では歌舞伎自体が伝統芸術という位置付けですから、作者の仕事も変わってくるわけです」。
竹柴さんによると、まず「古いものを護っていく仕事」であるということだ。同時に毎月実際に公演もされている。資料として保存しておけばいいだけでなく、芝居は生き物でもある。そこに現代ならではの「創造という意義もある」という。
以下、竹柴さんのお話をまとめてみる。
●一つ目は「物を書く」という基本的な仕事だ。ある演目があり、それは市川家、あるいは音羽屋でそれぞれ演出方法が違うことがある。役柄と役者が変れば、その役者に合わせて台本も改訂していかなければならない。大まかなストーリーは同じでも、細かい調整とそれに合わせた新たな上演台本が必要となる。
また、興行時間内にカットしたり延ばしたりする必要もあるし、稽古場で訂正していく作業もある。また、古い狂言を久々に復活するという場合は、演じたことのある役者の頭の中にある「台本」を文字として記録していく作業も。
●舞台で小道具として文など文字の書かれた和紙が登場することがあるが、あれを日数分用意したり、実際に文字を書くのも、狂言作者の仕事の「書く仕事」のひとつである。
●「配役」を担当する場合もある。興行会社と座頭級の役者により、大きな役やその周辺等の配役が決定される。それを受けて、その脇役、さらにその周辺の役については狂言作者が決めていく。