韓国の家族像にはどんな変化が起きているのか。20代、30代、40代の女性たちが自らの家族にカメラを向け、3年の歳月をかけて作った『ショッキングファミリー』からは、その現実が見えてきます。メガホンを取ったキョンスン監督に、自分を撮ることで見えてきた家族の形について聞きました。
家族の問題は社会に深く根ざしている
『ショッキングファミリー』には40代のシングルマザー、別居中の30代、一人暮らしの20代の「今」が映し出される。 |
ガイド:
監督は作品中で自分とスタッフの家族にカメラを向けるという興味深い手法を取っています。『ショッキングファミリー』を撮りはじめたきっかけを教えてください。
キョンスン監督:
スリムが小さい頃から2人で生活してきたのですが、女ふたりでやっていくのはとても大変だと気づいたのです。社会的な制度が脆弱であること、子供と2人で生活していることに対する偏見、さらに映画制作の仕事のために子供を預けようとしても預けられる場所がない。そんなことを経験しながら「どうしてこんなに不便なことが多いのだろう」と思うようになりました。前からも感じてはいたのですが、「韓国社会には問題がある」と肌で実感したのです。そして家族についての映画を撮りたいと思うようになりました。
スリムを自由に育てたいと思っていたのですが周りの人たちは「そんなことで大学に行けるのか?」とか「早いうちから英語の勉強をしたほうがいい」などといろいろ心配していました。私たちの生き方が自分たちとは違うというんですね。家族の問題は社会に深く根ざしていると感じ、『ショッキングファミリー』の制作を始めました。
20代、30代のスタッフも自分の家族のことを撮影しています。一人一人考え方は違うので、型にはめるのは嫌だったのです。年齢によって家族の形が異なることを示したかったのではなく、多様性を見せたかったのです。人によって様々な悩みや生き方を持っていること。それを見せようと思ったら偶然20代、30代、40代のストーリーになったのです。
次ページでは、自らを被写体にして感じたことを語ります。