お手伝いをするメリット
再び、研6のAさんと研1のBさん。
Aさんの早替わりをお手伝いをしながらも、BさんはそばでAさんをしっかり見ています。
舞台化粧はアップで見えます。髪型やカツラを変える手順も、衣装の着方も。
使っている整髪料もアクセサリーのしかけも、すべてわかります。
“どんなところにAさんは気を配っているか?”……そんな、その瞬間を見ていないと感じることのできないこともわかります。
見て盗む――。ただそばにいるだけでも、とても勉強になるのです。
見ているだけじゃありません。
Aさんが着替え終わりまだ出番までに時間がある時、Bさんを隣りに立たせ鏡越しに…「アイライン、ココまでひいた方が……」などとマンツーマンでお化粧講習。
新人公演の稽古場でも、自分のことで精一杯なはずのAさんですが、Bさんに演技のアドバイス。
これはAさんの“自分が教えてあげられるすべてのことを教えてあげよう”という気持ち。
それは決して“お手伝いをしてもらっている”云々には関係なく誰に対してでもですが、やはり接する時間の多い下級生には、その思いも強くなるものです。
やがてBさんも上級生になり、お手伝いの下級生が付くようになりました。
お手伝いをしてもらう中、その下級生に多くのことを教えます。その中にはもちろん、Aさんから教えてもらったこともたくさん含まれています。
先輩が後輩に多くのことを教え、やがてそれを受け継いで行くという宝塚歌劇団の伝統。
それは、全員で一つの舞台を創るという意識と、自分が下級生の頃上級生に教えてもらった様々なことへの有り難味を、いつまでも忘れないからでしょう。
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