宝塚ファン/宝塚歌劇の舞台とバックステージ

宝塚の洋物と日本物作品……それぞれの準備の大変さとは

宝塚歌劇の作品を大きく分けると“洋物”と“日本物”に分かれます。洋物と日本物……化粧も髪型も衣装も大いに違います。どちらにしても大変だけど、タカラジェンヌにとってはどちらが大変? “洋物”と“日本物”の仕度の違いや、それに掛かる生徒の大変さをお話しましょう。

桜木 星子

執筆者:桜木 星子

宝塚ファンガイド

宝塚の洋物と日本物作品、どちらが大変?

宝塚の洋物と日本物作品の大変さ

宝塚の洋物と日本物作品の大変さ

宝塚歌劇の作品を大きく分けると“洋物”と“日本物”に分かれます。
皆さんのお好みや演技的なものはさておき、“洋物”と“日本物”の仕度の違いや、それに掛かる生徒(タカラジェンヌ)の大変さをお話しましょう。
 
<目次>
 

お化粧

宝塚歌劇団の生徒は、舞台メーク=お化粧を自分でします。
あの厚化粧(?)を15分程度でこなしてしまう……。慣れれば簡単! とお思いになるでしょうけど、そんなことはない。どんなに毎日やっていても、自分で納得できる化粧にはなかなかならないもの。だから生徒は常に研究。

洋物と日本物のお化粧のどちらが大変か? ま、どちらも大変なのですけれど、これは個々の生徒さんによって違うでしょうね。

洋物は「陰影をたくさん付けなければならないし~」「下マツゲも付けたいし~」「モミアゲも描かなきゃいけないし~」「背中も塗らなきゃいけないし~」と結構手間が掛かかります。

日本物は、洋物に比べ上演自体が少ないですよね。だから「日本物の化粧に慣れていない」という生徒も多いです。なので、自分の理想の化粧に持って行くまでが大変。
また、お肌の調子が悪い時、洋物よりやりにくいという人もいます。

どちらが大変かは一概には言えませんが「慣れている」という点で、洋物の方が気持ちが楽かも。

お化粧は顔だけではありません。衣装を着ても露出する体の部分……首や胸元、背中、腕も塗らなくてはなりません。
日本物の場合は、首や襟足、指先から二の腕辺りまでと、塗る面積は少ないです。
洋物でも男役は日本物とほぼ同じ。
娘役はさらに、背中、胸元、腕全体と塗る面積が多いのでちょっと大変。

洋物の中に“黒塗り”という曲者(!)がいます。
化粧方法は、ピンクやオークル系の洋物化粧とさほど違いはありませんが、体を塗る面積が広くなります。衣装によっては、ウエストの辺りも塗らなくては。

顔にしても体にしても、塗るということは、それを拭き取るという工程もあるわけでして。“黒塗り”の場合は、クレンジングクリームでちまちま取るよりお風呂に入っちゃった方が早い。

一つの公演が、一本立てだったり、洋物&洋物の二本立てだと、同じ化粧で済みます。
それが、洋物&日本物だったり、洋物&黒塗りだったり、さらに日本物&黒塗りだったりすると……? 
「化粧する!」「化粧取る!」「体塗る!」「体取る!」を繰り返さなくてはなりません。それが二回公演だと楽屋は修羅場! 
 

衣装

皆さん、洋服を着るのと和服を着るのと、どちらが大変? どちらが時間がかかります? あきらかに和服ですよね。
舞台の衣装も同じこと。

衣装を着る時、または脱ぐ時には衣装部さんが手伝ってくれますが、生徒一人一人に衣装部さんが付いているわけではありません。
トップスターやトップ娘役以外、数名の生徒に一人の衣装部さん。

洋物の衣装だと、“フィナーレの羽根を背負う”とか“ものすごく大きなドレスを着る”は無理としても、自分一人で着られる衣装がたくさんあります。
例え早替りでも、背中のファスナーを上げてもらうなど周囲と着せ合いっこができます。

しかし着物はそうはいきません。やはり衣装部さんの手を借りないと、着崩れしないようにきれいには着られません。
それが早替りだと、ある程度(帯を結ぶ前ぐらいまで)を自力で何とかする…。衣装部さんの手が空く順番を待つのにも気持ちが焦る……。
そう、日本物は大変。(生徒より衣装部さんの方が大変ですけれど……)

衣装の片付けにしても、洋物の衣装だと“ハンガーに掛ける”または“衣装に付いている吊り手の紐をフックに引っ掛ける”だけで済みます。
だけど日本物の衣装は畳まなくてはなりません。早替りで畳む時間がなければ、後で空いている時間に。(これが……正直面倒くさい……)

なので、衣装に関しては、洋物の方が断然……楽!
 

髪型

洋物の頭=髪型は全部自分でやります。カツラを被るにしろ、地毛をセットするにしろ……ね。
時間があれば慣れたもんですが、早替りで髪型を替えるというのはかなり大変。

しかし日本物は全部、床山さん任せ。
鬘を被る前の羽二重も床山さんが、鬘を被る&取るも。
鬘のセット=結い直しももちろん床山さんが。

自分でやらなくてもいいというのは……楽です!

難点は……床山さんの人数は少ないので、やってもらう順番を待たなくてはならない。自分で自分の好きな時に…というわけにはいきません。

それから……羽二重をすると地毛がぺしゃんこになってしまいます。日本物&洋物の公演の場合、そのぺしゃんこになった髪を復活させるのが一苦労。
娘役はひっつめにしたりカツラを被ったりするのでそうでもありませんが、男役は大変でしょう。
 

番外編

生徒にとって慣れている洋物ですが、大変なことも。
それは、自分で用意しなければならないものがあるという点。

洋物のカツラは、お揃いのカツラ以外、自分で用意しなくてはなりません。自分でスタイルを考え、専門の美容院に注文する…。
地毛をセットする時に使う整髪料なども大量にいりますね。
そして髪飾りやアクセサリーもほとんどが自前。小さいことですが、ストッキングやソックスなんかも。

それに比べ日本物では、自分で何かを用意するということはありません。鬘やアクセサリーはいらないし、付属品もいりません。足袋も腰紐も全部衣装部のもの。自分で用意するのは、せいぜい肌に触れる和装の下着程度。

以上、化粧・衣装・髪型に関して、洋物と日本物の違いや、生徒に掛かる苦労点をお話してきましたが、どんなに大変でもやってのけるのが宝塚の生徒。
早替りもお化粧替えも大変だけど、涼しい顔して舞台に出る……
客席には温かいお客様が待っていらっしゃいますからね。


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