蘇州最大の古典園林、拙政園
蓮と柳が美しい拙政園の池。ほとりには様々な花や木が植えられており、四季折々に花や新緑、紅葉などが楽しめる
蘇州の古典園林中でも最大を誇る庭園ながら、その半分以上は池。多彩な建築様式を見せる趣ある建物が水面に映え、そのほとりには古木や四季折々の花が咲き乱れ、とても花やかな風情を見せている。
全体は東園、中園、西園の3景区に分かれており、蘇州のあらゆる造園技法がここに詰め込まれている。歩き回っていると、たとえば庭園の端にたたずむ東屋の背後に川が流れていて、その狭い狭い空間にひどく惹かれたりする。
街歩きをしているとふと思わぬ光景に出会うように、この庭園を歩いていると思わぬ場所に思わぬ光景を発見する。できることならツアーではなく自力で、お茶と甘いお菓子でも持って、ゆったりと訪れたい。地元の名士なのだろうか、老夫婦が、ツアー客がまったく行かないようないちばん奥の建物で、ゆったりとお茶を飲んでいた。何も語らず、ただお茶を飲んでいた。とてもすてきな夫婦だった。
ちなみに、拙政園は『紅楼夢』の大観園のモデルともいわれている。現在一部は博物館になっている。
中国四大庭園、留園
中国四大庭園のひとつ、留園。園内では数か所で民族衣装を着た女性によるニ胡や笙、楊琴など民族音楽の演奏が行われている
単に景色が楽しいだけではなく、回廊自体も留園法帖と呼ばれる彫刻や、同じ形はひとつとしてないといわれる漏窓越しの景色、あるいは漏窓から差し込む光で楽しませてくれる。
池を見ながらポケッとしていると、どこからともなくニ胡の音が。一歩一景といわれるほど歩くたびに変わる景色、その景色が四季折々で映り行くだけでなく、花が開き、葉が落ち、鯉が池を揺すり、風がそよぎ、雲が水面を流れ、傾く太陽が色を変え……一つひとつの時間がとても愛おしくなってくる。