そして――正面をとるのが難しい
盆は廻っています。その状況で、どちらが自分にとっての正面なのかを決めるのが難しいのです。
これはダンスシーンなどによくあることですが、正面は常に客席なのか、それとも、盆の中心から放射線状に外が正面なのか……。
また、初めの位置からまったく動かない場合は問題はありませんが、廻っている盆の上で踊る場合、ホントにどっちが正面だかわかんなくなってきます。ダンスの振りがくるくる廻る振りだと堪りません。“盆は廻る 私も廻る そしていつしか目が廻る”……まさにこんな感じ。
それから――盆の円周には細い隙間があります。そこに運悪くヒールの踵が入りそうになったり。
また照明が暗い場合の乗り降りも、ちょっと怖い。盆への最初の一歩を踏み出すのが少々怖いですね。
……と、本舞台と変わらずに見せているタカラジェンヌも、いろいろと苦労しているわけですね。
以前「盆を使う場面のお稽古は、どーやってやるのですか?」と聞かれたことがあります。答えは「稽古場では、盆のことはあまり意識せずに稽古する」。だって仕方がありません。稽古場には盆はないのですから。
だから大変なのが本番間際の舞台での稽古です。衣装を着けて、オーケストラの演奏が入り、照明も……という本番さながらの舞台稽古よりも少し前に、盆だけを廻してもらい何度も稽古をします。その時に初めて、盆の上で踊る感覚を掴みます。
さて次回は――宝塚歌劇のシンボル「大階段」!
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