宝塚ファン/宝塚歌劇団 トップスターの変遷

星組トップ・稔 幸、星奈優里―退団(2ページ目)

2001年10月1日――名場面を数多く残した星組トップスターコンビ・稔 幸さんと星奈優里さんが、星組の仲間、大勢のファンの方々に見送られ、宝塚歌劇団を退団しました。

桜木 星子

執筆者:桜木 星子

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……とお話すると順風な道を歩んだように聞こえるが、多くの生徒たちが悩むよう、稔さんも早くに退団を考えた。しかし“やめる”ことで全く違う道を選ぶのではなく、自分が今ここで“やれる”ことを探しはじめた。“宝塚の男役”を追及しそれに徹しぬいた。そしてそこには(ともすれば見かけだけの)様式美ではなく――人間らしさ――が必ず表れていた。

最後の役となった“オスカル”も、オスカルという1人の女性の内面を見事に表し“新しいオスカルを演じた”と評判になった。

実力以上のものを求め“男役”でいることを楽しんだ人。男役の制服といわれるエンビ服の着こなし方に始まり、楽屋出の時のファンへの投げキッスに至るまで、徹底した男役&トップスター・稔 幸の姿は気持ちイイ。もちろん言うまでもなく仲間からは愛され尊敬され、ファンの方々からはひとりの人間としても尊敬された。

私の感じる彼女の魅力――それは気品、色気、風格。『ジーザス・ディアマンテ』妖女S、『うたかたの恋』ジャン・サルヴァドル大公、『エリザベート』フランツ・ヨーゼフ、『ダル・レークの恋』ペペル、『風と共に去りぬ』レット・バトラー……。役の系統としては様々だけど、必ずそこには気品と色気と風格がある。

中でも日本物は絶品だった。『我が愛は山の彼方に』朴秀民、『花の業平』在原業平……。堂々たる風格に兼ね備えた気品、目から体中からこぼれ出る色気。コメディーセンスも抜群。役を演じるというより役を楽しむ人。だからこそ観客は惹かれる。勿論そこに行き着くまでの稽古場での努力は、並大抵のものではなかっただろう。

彼女の江戸物の芝居をもっと観たかった。弁天小僧菊之助なんてどう? キセルを振り回しあの名台詞でノルさんにタンカをきられたら……考えただけでもゾクゾクする。でも……その夢はもう叶わない。
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