宝塚ファンでなくともどこかで一度は聞いたことのある『ベルばら』の名曲中の名曲「愛あればこそ」をはじめ「心のひとオスカル」「バラ・ベルサイユ」などを作曲されたのは寺田滝雄先生。ロマンチックで盛り上がりの美しい寺田ワールドです。また「白ばらのひと」「愛の怯え」などを平尾昌晃さんが作曲されましたが、これも宝塚にぴったりマッチした名曲となりました。
オスカルはじめ男役の軍服のカッコよさ、アントワネットをはじめ娘役のドレスの美しさ、豪華さもこれぞ宝塚! 宝塚をパロディー(!?)にしたコントなんかでもよく見かけますが、宝塚といえば軍服&ワッカのドレスという印象があるよう。それも『ベルばら』が宝塚ファンに限らず多くの人々に知られているという証拠といえるでしょう。
そしてやはり忘れてはならないのが、原作の池田理代子氏。『ベルサイユのばら』は週刊マーガレットで1972年から82週にわたって連載されました。漫画ファンたちはロココ時代にタイムスリップし、ベルサイユ宮殿で繰り広げられる晩餐会や、市民たちが立ち上がったフランス革命を感じました。これを読んでフランスの歴史に強くなったという人も大勢いたのでは? 同じく池田先生の原作『オルフェイスの窓』も植田紳爾先生の脚本・演出によって星組で上演されています。
すべてご紹介できませんでしたが、こうしたヒットメーカーらの手によって『ベルばら』は宝塚の代表作と呼ばれる作品に仕上がりました。長谷川一夫先生をはじめ他界された先生方もいらっしゃいますが、諸先生方の教えられたものは必ず次の世代に受け継がれています。また生徒間でも上級生が下級生に、自分が教えられたことや経験を伝えていきます。先輩方の型を知った上で自分らしさを取り入れリメイクする――これが宝塚歌劇団の素晴らしい点。
演劇の中には“この演目をやれば大入り(袋)が出る”すなわち観客がさらに増えると言われる出し物があります。歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』や『勧進帳』、『レ・ミゼラブル』『キャッツ』などのミュージカル、森光子さん主演の『放浪記』、蜷川幸雄氏演出の『近松心中物語~それは恋』など、時を経て上演されても多くの観客の支持を得る――宝塚歌劇の『ベルサイユのばら』はこれらと同じに並び称される出し物であること間違いなしです。