七夕の由来
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アンドロメダ大星雲。七夕には、星の世界に思いをはせることもできます | 7月7日は七夕です。家庭でも保育園・幼稚園でも、竹に願い事を書いた短冊を飾りますね。天の川を隔てて離れ離れになっている織姫と彦星が年に一度出会える七夕の日。五節句の1つでもあり、中国の伝承と日本古来の豊作祈願のお祭りが次第に一体化して現在の形になったと言われています。
織姫と彦星の話のモチーフは様々。よく知られているのは、「夫婦になった織姫と彦星が仕事をおろそかにしたため、天帝が怒って天の川の両端に引き離したが、嘆く二人がかわいそうになり、一年に一度だけカササギの橋を渡って会えるようにした」という話ですね。その他に、水浴び中の天女の羽衣を隠して妻にめとる羽衣伝説バージョンもあり、このお話では、二人のあいだに生まれた子どもが大きな役割を果たします。実際の星空にも、牽牛星であるわし座のアルタイルのそばに、小さな星が2つ並んで見え、伝説では二人の子どもたちということになっています。
今回は、七夕に読んでみたい絵本をご紹介しましょう!
<INDEX>
1ページ目:基本の七夕伝説はこちらで
『たなばた』『たなばた』
2ページ目:七夕の日はこんな風に過ごす
『たなばたまつり』『ねがいぼしかなえぼし』
3ページ目:七夕の日をもっと楽しく!
『たなばたプールびらき』『たなばたこびとのおはなし』
母を追っていく子に姿が胸を打つ『たなばた』
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ここで購入!牽牛は織姫と結婚し、二人の子をもうけますが、王母が織姫を天の世界に呼び返してたため、子どもたちと一緒に天まで追いかけていきます | 昔々、天の川の東側は天女の世界、西側は人間の世界でした。あるとき、7人の天女たちが天の川で水浴びをしていると、牛に助言を受けた牛飼いが末娘の着物を隠してしまいます。娘は着物を返してもらう代わりに牛飼いと結婚し、幸せに暮らします。しかし、織姫は天の王母に連れ戻されてしまい、牛飼いは二人の子どもたちと一緒に追いかけていきます……。
本当にきれいな水彩の絵本です。にじみ絵のほかに飛びちらしの技法などもあり、この世ならざる「伝説」の感覚が伝わってきます。カササギのかける橋も、星が擬人化されたような天の川も、じんとくる美しさ。人物はぼかした一色の濃淡だけで表現され、わずかな点だけで豊かな表情を見せ、テキストも視覚的に絵に添うようにデザインされています。
愛しあう二人が権力によって引き離されること。また、天の川の水をひしゃくでくみ出そうとする父子3人のけなげな姿に権力者の心が揺さぶられること。夜空を見上げて語るにふさわしい悲しいお話です。
■『たなばた』
再話:君島久子
絵:初山滋
出版社:福音館書店
価格:780円(税込)
発行:1977年4月
織姫を取り戻せなかった牽牛のお話『たなばた』
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ここで購入!「とびぎぬ」である羽衣を隠し、天女の織姫を結婚した牛飼いでしたが、あるとき、子守唄の歌詞から織姫はとびぎぬを見つけだし、二人の子を連れて天に帰ってしまいます | 昔、牛飼いの若者が川のほとりで美しい着物を見つけました。それは天女である織姫の「とびぎぬ」でした。それがないと織姫は天に帰れません。牛飼いは織姫に結婚の申込をし、とびぎぬを隠してしまいました。結婚した二人の間には、やがて二人の子どもが生まれ、あるとき、上の子が歌う子守唄から織姫はとびぎぬの隠し場所を知ります。
こちらも、羽衣伝説と重なった七夕の由来譚ですが、織姫が当初から牛飼いとの結婚を不本意に思っているところが違っています。二人の子どもの絵が本当に愛らしく、牛飼いといるよりも天に帰ることを選んだ織姫も、子どもの父としての牛飼いは大切に思い、心を残しながら天への道筋を示します。再三、織姫に助けられたにもかかわらず、最後に心が弱かった牛飼い。最後の見開きページで、二人を隔てた天の川の水流が青く深く波立つ様子に、彼の取り返しのつかない思いが感じ取れます。
■『たなばた』
文:岩崎京子
絵:鈴木まもる
出版社:フレーベル館
価格:945円(税込)
発行:1984年3月
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