彼女たちはこうして「受験生の母」になった。
この私が合格させる!4年生・5年生編―中学受験マザーズの超リアル奮戦記 花鳥&風月(著) |
母子が頑張り、風子ちゃんの成績が上方で安定すると、待っていたのは周囲の「ママ友」たちによる仲間はずれ。「あなたはいいわよね、下の子もいないし」「風子ちゃんって、成績が悪いとおうちに入れてもらえないんだって?」というやっかみを受け流しながらも、受験を通じて母はひたすら孤独になっていく。
職場の同僚が「ウチの子が合格したのは、カミさんの勝利だよ」と言った言葉に触発され、中学受験にはそこまで親のサポートが必要なのか! と目覚めた花鳥さん。ウチはもう間に合わないかもしれないとの焦燥感が、彼女(と旦那さん)をフルスロットル状態にした。
夫と2科目ずつを担当してがっちりサポート体制を敷いたものの、5年生からスタートした花夫君の成績は、当初伸び悩む(私の印象では伸び悩むうちに入らないような気もするのだが……)。ところが波に乗り始めた花夫君は、ちょうど風子ちゃんが多少成績が振るわなくなり焦りが見えてきた頃、上方安定、絶好調となる。
この頃の二人の母の関係に、ある種のねじれが生まれる。それは嫉妬であったり、ひがみであったりするのだが、二人の交流は一時的に断絶されてしまう。しかしこの感情のねじれをそれぞれ客観的に理解し、お互いに「自分は不安で、孤独だ。こんな気持ちは彼女にしか話せない」と再び交流を回復するくだりは秀逸だ。
子どもの受験ほど、お互いの全てが透けて見えることはない。焦りと嫉妬は表裏一体。取り返しのつかない一言を投げ、また投げられることもある。それでも最後まで一緒に闘った二人は、子どもの受験と母同士の友情をうまく切り離して考えることのできた、レアケースなのかもしれない。
結果的に、二人の子どもはそれぞれ見事に第一志望校へと涙の合格を決める。『この私が合格させる!』と続編である『4年生・5年生編』の2冊を通して、学習法も沢山紹介されているが、私はその一つ一つよりも、母たちが掲示板やブログに残した、リアルタイムの努力の軌跡にこの本の価値があるのではないかと考えている。
続編でようやく明らかになるのだが、風月さんだけでなく、実は花鳥さんも自分自身が中学受験経験者なのだ。母が中学受験経験者であり、子どもの受験をサポートする力を持ち、さらにそれをブログで共有する。そんな「現代の母」たちが、中学受験の裾野を広げて行く。賛否ある中学受験ながら、これを親子の物語として見たとき、そこにドラマがあることは誰も否定できないだろう。
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