親はやらせたい、でも子どもはやりたくない。こんなときは?
私にも苦い経験があります。全身運動をさせたい、しなやかな筋肉をつけさせたいと考え、かつて娘にバレエを始めさせました。しかし、ぴかぴかに磨かれた広いバレエスタジオのバーレッスンで、明らかに私の娘だけがワンテンポ遅れ、手も足もハチャメチャ。他の女の子たちが細い手足で軽やかにジャンプするのに、母に似て骨太な娘は「どすん」と着地。まぁ、だからと言って、暗い表情はしていないし、通ううちにいずれはセンスもついてくるのではないかと、ストレッチやラジオ体操みたいなつもりで、まずは楽しく通おうと続けました。すると、10ヶ月ほど経ったところで、娘がある朝、深刻な顔で言いました。「ママ、おなかが痛い」。
おなかを下しているわけでもなく、何かあるのかなとゆっくり話をするうちに、毎週バレエのレッスン日に限っておなかが痛くなる、実はずっとバレエが嫌で仕方ないと、ぽつりぽつり話し始めました。あちゃー、親のエゴで娘に苦しい思いをさせてしまったかと、このときばかりは反省しました。「あともう少し、2ヶ月したらちょうど1年になる。おなかが痛いときは無理をしなくてもいいから、できるときだけ行ってみようか」。そう答えました。
このときは、子どもも親も、本人の適性の点で向いていないと思ったのと、本来の目的である「全身運動で筋肉を育てたい」ということは他の運動でも十分かなえられるものであったことで、先生には丁重に事情を説明し、1年で辞めました。何年か経った今でも、この「ママの失敗」は家族の中で笑い話になっていますが、それでも「1年は頑張った」という点で、娘も達成感があるようです。
子供を第一に、いろんな視点でお稽古を選ぶ
「子どもはやりたいが親は反対」、「親はやらせたいが子どもはイヤ」、どちらの場合も、結局は親と子どものニーズの食い違い。こんなときは結局、双方のスタートに立ち返り、考えることが必要なのではないでしょうか。親の側は何を目的としているのか。その目的はこの方法でなければ達成できないものか。そして何よりも子どもの負担になっていないか。逆にある程度の負荷を与えることで子供を伸ばしたいという方針だというのであれば、その負荷は合理的なものか。そして子どもの側の目的は?子どもは何をしているときが楽しいのか?そのコスト(月謝や施設費、用具を準備する費用など)は子どものお稽古として適切か?そして、これも大切なのですが、家族の意見は?いろいろな視点から考え、子どもも巻き込んで話し合うことで、自然と進むべき道が開けてくるはずです。何よりも、お稽古をするのは子ども自身なのですから。