政府の有識者による専門委員会が少子化対策について報告書をまとめました。そこで明らかになったのは「介護保険」ならぬ「育児保険」の創設提言など、乳幼児期の子育て負担軽減策。さて、あなたはこれをどう見る?

多方面盛りだくさんの少子化政策――「総花的」?

少子化対策を議論していた政府の専門委員会がまとめた報告書案の全容が明らかになり、話題を呼んでいます。
『<少子化対策>子育て負担軽減など、政府の専門委が報告書』――Yahoo!ニュース)

この中では、(1)働き方の見直し(2)育児支援サービスの拡充(3)経済的支援が大きな柱となっており、公的な子育て基金や育児保険の新設、出産一時金の前倒し支給(出産無料化についてはこちら)、子育て家庭への税制優遇、「子育てにやさしい」企業への助成拡充案などが盛り込まれ、育児家庭への経済的な支援を強化すべきと提言するものです。
【少子化に関する報告書の主な内容】
<地域・家庭の子育て支援>
・子育てマネジャー制度の育成
・地域子育て拠点の拡大
・学生の家庭支援ボランティアの導入
<働き方に関する施策>
・女性の再就職支援
・育児休業の取得促進
・子育て支援に熱心な企業の優遇策
<経済的支援>
・出産育児一時金の償還払い制度見直し
・乳幼児期の負担軽減
・妊娠中の検診費用の負担軽減
・子育て世帯への税制優遇
(5月15日付毎日新聞より)

国による子育てへの経済支援、地域や企業の子育て支援への取り組みなどを網羅し、幅広い内容であると評価されると同時に、「仕事と育児の両立支援、妊娠・出産対策などが総花的に盛り込まれた感もぬぐえない」(日本経済新聞2006年5月13日付朝刊)という評もあり、特にその具体的な財源への議論がなされていない点からも、今回の政策案の実現を厳しいと考える見方が強いようです。

財源はどうする?「育児保険」創設?

現行の「児童手当」は、小学校修了前の児童を養育している家庭に支給されますが(月額5000円から。支給対象は2006年4月1日から拡充)、収入による制限があり、全ての子育て家庭がそれを受け取れるわけではありません。これとは別に、新たにゼロ歳から3歳児までの乳幼児を持つ家庭への経済支援策として、乳幼児手当ての新設案が提言され、これについて猪口邦子少子化担当相は、「国民から寄せられる意見の多くが、育児の初期、乳幼児の時期だ。保護者も経済的な安定性に欠けている年齢である場合が多いことも考えていかなければならない」と前向きな発言をしています。

しかし、その実現には年数千億円の財源が必要と言われ、この「乳幼児手当」に始まる、施策実現のための財源捻出を具体的に議論することが必要となります。数千億円をどうやって確保するか。既に14日、政府は少子化対策に雇用保険の財源を活用する方針を固め、育児休業の取得促進策などに、雇用保険から最大1000億円程度を回す方向で検討を始めました。

また、専門委の報告書の中にもあった、公的な育児保険制度の新設や育児支援基金の活用なども検討。しかし、この「育児保険」には、早くも「介護保険制度に続き、これ以上国民に負担を強いるのか」などの不満が噴出しています。

小泉首相は、既に2003年の時点で育児支援施策の一本化と「育児保険」創設へ前向きな姿勢を示しており、財源の議論はともかくとしても現在サービス、財源共にバラバラである子育て支援策は、今後一体化され、拡充されていく見通しです。

消費税率論も再燃

少子化対策の実現にはコストがかかる、という認識から、14日に開かれた少子化に関するタウンミーティング(千葉市)では、川崎二郎厚生労働相が「今の財政のままでは(少子化対策は)できない。次の首相は国民に消費税をどのくらい上げるか話さなければならない」とコメントしました。

これを裏付けるようにして、政府は年金や医療など社会保障費の安定的な財源を確保するため、消費税を社会保障目的税化する方針を固めています。社会保障費全体の国と地方の公費負担は2004年度で約26兆円に及び、これを消費税で賄うには税率を10%超へ引き上げる必要があると言われています。財政再建には消費税率の引き上げは不可欠とされていますが、国民の反発は必至です。

少子化対策の特効薬?

報告書取りまとめの中心となった猪口邦子少子化担当相は、記者団に「少子化対策に特効薬はありえない。さまざまな施策の組み合わせが必要だ」と語りました。いまの国民年金制度は、出生率が2050年までに1.39に回復して安定することを前提に、保険料や給付水準を設定しています。しかし2004年度の日本の出生率は1.29と、最低値を塗り替え、さらに低下するというのが大勢の見方です。あと45年で出生率1.39という数字の実現に向け、国、地方、企業、医療、地域や家庭内、多方面への働きかけがなされていくことでしょう。

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