「褒めて伸ばす」の弊害?

前にあげた2点は、子育てでもよく言われ、お母さんたちも注意を心がけていることだと思います。しかし見逃されがちなのが、子供をけなすのでなく、「褒めない」ということの影響なのです。たとえば、妹の前で姉を褒めると、妹には直接にはネガティブなことも何も言っていないので、親はこれをOKと思ってしまいがちです。

しかし実際には、妹は自分がけなされたと同様の心証を受けるのです。親が意図しない言外のメッセージを受け取ってしまう、これが盲点です。

もう少し具体的に考えてみましょう。姉と妹と二人で親戚の家に行って、「あら~、お姉ちゃんすっかりきれいになって~」と言われたとします。親戚は「褒めたつもり」なので、まったく悪気はないのです。しかし、妹にしてみたら、「きれいになったと言われない=自分はきれいじゃない」というメッセージを受け取ります。だから、先ほどのように「お姉ちゃんに比べてあなたは…」と言われたのと同じ心理状態になるのです。

最近「褒めて伸ばす」という教育法が注目されている一方で、このように傷ついている子どもが多くなっています。

人間は、差に敏感な生き物なのです。きょうだいならばなおさら、何事も平等にしてあげなければいけません。片方だけを褒めるときは、一人だけのときにしたり、「ちょっとこっちにおいで」と手招きして耳打ちするなどの配慮をしましょう。

親は何を意識して子供に話しかけるべきか?

子供は大人のメッセージを敏感に察知するということがお分かりいただけたかと思います。では、大人が意識すべき点は、どのようなものでしょうか?

・ こどもは、「親が思っている自分像」をそのまま「自分像」として受け止めます
・ いくら頭にきても子どもの存在を否定するようなことを言わない
・ 兄弟や友達と比べるのは、仲を悪くする元凶。親は自分のことが嫌いなんだと思ってしまうため、自分に自信を失ってしまいます
・ ひどいことを言いそうなときには、「完璧なママ」を目指していないか考えてみて
・ そんなとき、必ずまわりにサポートを求めること。「子どもへの攻撃とママの孤独は裏表」
・ ほめているつもりで、「褒められない子」を作らない
・ ほめるときは、その子一人だけ、または耳打ちにするように配慮する

「親の責任」と肩に力を入れて考えてしまっては、子育ては大変なものになってしまいます。考えすぎず、「子供は敏感なのだ」とかつての自分の子供時代を思い出しながら、「自分が言われたらいやな事は言わない」「自分が言われたらうれしいことで、声をかけてあげる」を原則にする程度でも、十分な心がけかもしれません。

親と子も人間関係。お互いに気持ちよく信頼関係を結べるような会話をしたいものですね。


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【監修】 武蔵野大学 通信教育部 人間関係学部講師
生田倫子
東北大学大学院教育学研究科博士課程修了。教育学博士、臨床心理士、家族相談士。家族心理学、心理面接過程におけるコミュニケーションを研究。
臨床活動として、病院臨床・児童養護施設カウンセラー・スクールカウンセラー・被害者支援などを行ってきた。
連絡先:MCR(NPO法人・不登校引きこもり研究所)
『家族心理.com』



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