伝統ある英国児童虐待防止協会(NSPCC)が
子どもを持つ親に向ける広告が秀逸だ。
私達が子育ての中できっと経験している、
ストレスが限界値を超える瞬間を切り取り、
「虐待を思いとどまれ」と訴える。
英国児童虐待防止協会(NSPCC)
■あなたにも「その瞬間」がないだろうか?
下のNSPCCの2003年のキャンペーン広告は、若い母親と数ヶ月の赤ちゃんの、家庭内のある風景を切り取っています。
《抄訳》
あなたが必死の思いで夕食を作り、洗い物と片付けを終えた頃、ついにやっと赤ちゃんは寝入るのだ……それまでずっと泣き続けながら。
きっとあなたはこう思っているでしょう、『こんなの誰も教えてくれなかった……私の時間はどこ?』でも、赤ちゃんは決してあなたを困らせようと泣いているのではありません。それは普通のことです。あなたを必要としているのに、泣くことでしかそれをあなたに伝えることができないのです。もしあなたが赤ちゃんを叩いたり、必要以上に強く揺さぶったりすれば、それはあなたの赤ちゃんに深刻なダメージを与えるでしょう。子育てのプレッシャーからその一線を越えてしまう前に、NSPCCに相談の電話をかけてください。私達があなたと、あなたのお子さんを守ります。
さらに、次の広告では、父親と2歳くらいの子どもの、外出先での風景を描きます。
《抄訳》
じたばたと暴れまわり、足であなたを蹴り、ママを求めて泣き叫ぶ娘。ようこそ、これこそ「パパ」になることなのだ。
周り中があなたを見ている。きっとあなたを悪い親だと思うだろう。ひょっとして、男が子どもを誘拐しようとしていると思うかもしれない。世界中があなたを責めて見ていると思うかもしれないが、あなただけがそんな思いをしているわけではない。子どもが、一方の親の方を好む時期があるのは自然なこと……子どもの自己主張なのだ。こんな状況で、もしあなたが親としてのプレッシャーに潰されそうになって子どもを叩いてしまいそうになったら……その一線を越えてしまう前に、NSPCCに相談の電話を。私達があなたと、あなたのお子さんを守ります。
この広告シリーズは3種あり、もう一つ「ダメと言い続けても壁に落書きをする子どもを叱る母親」というバージョンもあります。
この広告シリーズのオリジナル画像を大きなサイズでご覧になりたい方は
英国児童虐待防止協会(NSPCC)から
Media Centre>Image Library>Artwork>Supported parents mean safer childrenで、印刷サイズの画像が手に入ります。
どの広告も、子育てをしている私達が見てハッと胸を衝かれる瞬間が切り取ってあります。見る者に覚えのある感覚、または、悔いの残る思い出?そして、それが「自然」であり、かつ「一線を越えることは危険なのだ」ということを的確にアピールする、秀逸な広告だとカワサキは思いました。
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