舞台はNY、パークアベニューの超高級マンション。
全米ベストセラー『ティファニーで子育てを』(文春文庫)は、
米国の”マネー・エリート(超大金持ち)”家庭に雇われた
ベビーシッター=ナニーが見た、家庭のエグい内幕を暴露する。
米国のハイソな子育てとは?
『ティファニーで子育てを』(文春文庫)
愛情以外のすべてを与える
これがハイソな子育ての掟
■マネー・エリートの子育て原則―母親は何もしない
主人公「ナニー」はニューヨーク大学、児童発育学専攻の大学生。しかし、アルバイトとしてNYアッパー家庭を専門としたベビーシッターをしている。この本『ティファニーで子育てを』は、そのナニー(作者エマ・マクローリン)の長いベビーシッター経験をもとに、ほぼノンフィクションに近い形で書かれている。
超大金持ち(いつから金持ちかによってもランクが分かれる)の母親たちは、自分で子育てをしない。したとしても、まずは自分の時間を持つこと(仕事はしない。目的はもっぱら買い物とか、社交とか)が最優先で、子育ては二の次……と、子育てを担当するために雇われたナニーは実感している。
これでもかとハイソなセンスに彩られた邸宅や、NYど真ん中の高級マンションで、ナニーは様々な母親たちに「もったいぶった」面接を受け、怪物並みにしつけられていない子ども達の相手をする。
母親たちはその様子を満足げに(自分は一流ブランドの洋服を汚されたくないので遠巻きに)ながめながら、強迫神経症気味の「子育ての規則」をシッターに遵守させ、守りきれなかったり気に入らなかったりしたシッターはさっさと首を切って「はい、お次」というワケ。
■母性はどこへ?
母親たちが、優雅に「お願いね」とシッターに渡す、トンデモ「規則リスト」には大笑い。
子どもがアレルギーを起こす(かもしれない)禁止食べ物は、世の食物のほとんどを網羅しているのではないかというほどの種類。他にも添加物禁止、保存料禁止、「アメリカ製食品」禁止(アメリカ人なのに!)、「M」で始まる食べ物すべて禁止(爆笑)、食べる前にすべての食物を計量して、おかわりは禁止、とか。
さらに、ブルジョワ家庭の母親達たちは、彼女達の命でもあるインテリアを子どもに汚されることを極めて恐れている。子どもの食事はダイニングルームではなくキッチンで。できればその後、食器だけじゃなくて子ども自身も水洗いして欲しい、というくらい。
子ども部屋は、玄関からも大人の寝室からも「はるか彼方」に離れたところ。子どもは大人の世界の付属物。または大人の自称「命よりも大切なもの」兼、実のところ「厄介もの」。
幼稚園や学校への一切のお迎えはシッター任せ。他の子どもと遊ばせる時もシッター任せ。お稽古への送り迎えもシッター任せ。
そして、そんな母親達たちはその間、一流店で「次のパーティーのためのショッピング」に余念がない。ショッピング、ショッピング、ショッピング……母親達はそれで日中を過ごしているのだ。
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