「てってーてきにサイコー」
「あたしエロイーズ。6歳」
NYは5番街にあるプラザ・ホテルの最上階の部屋に、英国人のナニーと猫みたいな顔した犬(のちにパグと判明)ウィニー、カメのスキッパーディーと住んでいる、「はっきり言って都会のこども」。
天衣無縫、傍若無人、プラザ最上階の廊下のつきあたりの「あたしの部屋」に行くのには、「スケート靴がおすすめよ」。
フロント、ロビー、プラザのあらゆる部屋を駆けめぐり、”ロビーのこまりもの”と呼ばれながらも、ベルキャプテンも支配人もみんなお友達。
そして、「たいくつするのは、サイテー」。だから、「フォークで髪をとかしてみる」わけ。
「ああ、神さま、なんとかして。てってーてきに忙しいったらありゃしない」
「お部屋につけてね、どうも、ありがと」
なんてったって、ママは「ホテルのオーナーの知り合い」で「バーグドーフ(5番街の高級デパート)でもつけがきく」、「はっきり言って、ココ・シャネルの知り合い」。
AT&Tの株も持ってるしね。
ママはヨーロッパにもパリにもよくいくし、ときどきバージニアにもいく。「そのときは弁護士がいっしょ」。
いつも不在で、「お天気がいいと手紙をくれて、あたしをさそう」。
たまにエロイーズがひどい病気にかかって「頭がずっしり」になると、「ママをよんでもらう。長距離電話。お部屋につけで」。
食事はほとんどルームサービス。エロイーズはルームサービスを注文するのも手馴れたもの。犬のために「ローストビーフの骨1本」、カメのために「レーズン1箱」、そしてナゼか「スプーン7本」、以上を「お部屋につけてね、どうも、ありがと」。
学校には「てってーてきに行きたくない」から、家庭教師がくる。アンドーバーのロースクールの学生、フィリップはエロイーズの格好のえじき。「いつもすっ飛んで帰るわ」。
「だって、あたしはまだ6歳だもん」
そんなエロイーズにも、眠れない夜がある。すると洋服だんすの探検に出かけちゃう。オバケみたいなガやら、人食い鳥やらうじゃうじゃいるのに出会って、危機一髪。「助かったけど、心臓ばくばく」、そんなわけでナニーを「懐中電灯で起こさなきゃ」。
「足の爪に赤チンつけて包帯まいてよ」、ナニー!