ベビースプーンが生まれるまでのミカンの木の物語
もう実がならないためミカン畑から切り出された、年老いたミカンの木 【画像提供 スタイルストア 渦輪倫子 つくり手ブログ】 |
良いミカンの実を多くつけるために、ミカン園ではミカンの木を毎年切り戻し剪定をします。そのため、ミカンの木は背が低く、横に広がるようにクネクネと曲がりながら育ち、枝が多いため節も多くなります。短くて曲がっていて節くれだっていて、ミカンの木は木材としては決して加工に都合が良い木ではありません。
でも、ミカンの木の役目は、見た目の良さよりも、多くの実をつけること。ミカンの木は毎年毎年たくさんの実をつけ、やがて50年ほど経ち、実が減って役目を終えるとバッサリ根元から切られ、最後は捨てられます。
この捨てられる運命にあるミカンの木を、活かすことができないだろうか? と考えた人がいました。加工しにくいミカンの木でも、小さなスプーンなら作れるのではないか……。捨てられるミカンの木をもらい受け、切られたミカンの木の1本1本の性質を見極め、スプーンに適した部分を手作業で切り出し、丁寧に加工し仕上げ、ベビースプーンは誕生しました。
50年間実をつけ続けてきたミカンの木は、こうして、切られた後も小さなスプーンとして生き続けることになり、赤ちゃんを育むことになったのです。
スプーンに残る木目は、ミカンの木が毎年枝を伸ばし実をつけてきた証。節は枝が伸びていた根元の部分。節目には伸びようとする木の生長パワーが凝縮されている。スプーンを手にすると、ミカンの木が持つ強い生命力が伝わってくる。ミカンの木のパワーをそのまま美しく残した技術にも感心 |