鎧兜の違いは何?初節句の五月人形の選び方

鎧兜の違いは何?初節句の五月人形の選び方


男の子が授かったらもうすぐ迎える初節句。初節句に用意する五月人形はどこを見て選べばよいでしょうか? 今回は、男の子の初節句に選ぶ五月人形をご紹介します。

<目次>  

鎧兜など五月人形にはいろいろな種類が

五月人形1伊達政宗
人気の伊達政宗の鎧兜。画像は伝統甲冑師平安翠鳳作、伊達政宗伊予札(いよざね)鎧四分の一。
五月人形といわれるものにはいろいろな種類がありますが、主流は鎧兜。鎧兜には大きく分けると、京甲冑・京兜・京鎧や江戸甲冑・江戸兜・江戸鎧と呼ばれる職人手づくりのものと、大量生産品のものがあります。どれを選ぶか決めるには、まず五月人形の始まりを知っておきましょう。鎧兜はなぜいつごろから飾られるようになったのでしょうか?

男の子を病気や災いから守り、将来世の中に出て立派になってほしいという願いを込めて、端午の節句に鎧兜を飾る習慣が江戸時代の頃に始まったといわれています。武士の世のトップといえば征夷大将軍。その征夷大将軍の鎧兜は天下を取る意味を持つことになります。この意味を重視するなら征夷大将軍の鎧兜の五月人形を、トップにこだわるよりも好みの名将にあやかるのであれば名将独自の鎧兜の五月人形を、芸術品として持つのなら作家性の高いものを、イベント的に飾るのであれば大量生産品の五月人形や好みのキャラクターの五月人形を選択するとよいですね。ここでは、征夷大将軍の鎧兜・名将の鎧兜・芸術品となる京甲冑と江戸甲冑で、わが子の五月人形を探してみましょう。
 

手に取って裏返すのが品定めの基本

五月人形2伊達政宗
小型の兜ならコンパクト。仙台市博物館所蔵の伊達政宗の兜を銀仕立てにして銀箔竜の屏風とセット。この兜は映画「スターウォーズ」に登場するダース・ベイダーのモデルになったといわれている。
五月人形3兜の頭裏
兜を裏返して見てみると、刺し子や皮が。この兜の頭裏に使われているのは鹿の皮
鎧兜をつくる職人を甲冑師といいます。甲冑師のつくる鎧や兜には、ひとつひとつに本物の鎧兜に近づけるこだわりを見ることができます。たとえば兜をひっくり返して見てみましょう。頭裏(ずうら)には、皮が貼られているものや刺し子が施されているものがあります。鹿の皮はたいへん固く、頭を守るために適している素材として選ばれています。刺し子も手がかかる作業です。見えないところにも技を使うこだわりが頭裏だけを見てもよくわかります。購入する前に見ておきたいポイントです。

 

京兜と江戸兜など、違いを知って選ぼう

五月人形4兜の鋲
京兜の鉢の鋲。手作業で打たれています。鎧兜を構成する小さな一片は小札(こざね)。この兜の小札は白檀塗り。ほんのりと白檀の香りが
五月人形5金箔
こちらは小札に純金箔を貼って仕上げた京兜の錣(しころ)。トップの証の金色使いは兜の王道
五月人形6江戸兜
江戸兜の一例。鹿の皮に漆を塗った小札を使い見事な仕上がり。ツルンとした鍬形が勇壮なイメージ
頭の上部をぐるりと囲む兜の鉢(はち)は、大事な頭を守るために2重3重に重なり、さらに鋲が打たれています。これらの細工も兜選びでは見ておきたいところ。京兜でも江戸兜でも職人仕事の鋲はひとつひとつ手打ちされています。

京兜は、仕上げに京ならではのこだわりがあります。たとえば兜の後ろ側の錣(しころ)を見ると、ひとつひとつの小札(こざね)に純金箔を貼ったものや、漆と白檀(びゃくだん)を混ぜて塗った白檀塗など、京都の伝統技術が使われています。一方、江戸兜では金色に光る部分は本金メッキが多くなります。江戸兜の中には小札を皮や和紙でつくり漆を塗ったものや、伝統技術の印伝が施されたものもあり、芸術の域に達しています。京兜と江戸兜の違いは、この仕上げ方にあります。

京兜と江戸兜で違いがわかりやすいのは鍬形(くわがた)。兜の正面にツノのように立っているのが鍬形です。この鍬形の正面に見える部分を面前(つらまえ)と呼び、京兜では面前に松葉の模様が刻まれています。一方、江戸兜では面前がツルンとして模様はありません。ただし、江戸兜や大量生産品の中には面前に模様があるものもあるので、ちょっと注意が必要ですね。

繊細な細工と雅な伝統で選ぶなら京兜、重厚感や渋い斬新な技巧で選ぶなら江戸兜というところでしょうか。価格としては一般的に京兜のほうが高くなる傾向があります。
 

わが子への願いで選ぶ五月人形の兜

五月人形7兜の竜
京兜の竜。ヒスイの玉を持っています
五月人形7兜の竜
竜をはずしてみました。金箔にヒスイの玉の輝き。ちなみに背後の竜は金メッキの竜
さて、鎧兜を見る時の豆知識を少々。征夷大将軍の兜には、正面に竜が飾られています。これは「鯉の滝登り」といわれるように、急流を登りきった鯉が竜となり天に昇った故事にあやかっているものです。その竜がヒスイなどの玉を手にしているのは天下を取った印。まさに手に入れろドラゴンボール。征夷大将軍の兜は、「登竜門」を通り抜けて立身出世をという、どこまでも上昇志向の兜なのです。わが子を超エリートにと願うなら征夷大将軍の兜?
 

兜の脇に立っているものには意味があった

五月人形9太刀
向かって左に弓矢、右に太刀を飾る
五月人形10太刀
太刀には刃が抜けるものと抜けないものが。この太刀は本物と同様に抜け、柄(つか)をはずす釘も打ってある。刃にはやはり竜が刻まれている
鎧や兜の両脇を見ると、弓と太刀が並べられているものがあります。これはいったい何でしょうか? 武将が戦いの武器を飾っているのでしょうか? そうではありません。初詣などの破魔矢と同じように、弓矢には魔除けの意味があります。五月人形の弓は戦いで敵を射るための弓ではなく、病気や事故などに合わないようにというお守りです。

また、太刀のような刃物を置くのは物騒にも見えますが、この刀は切るための刀ではありません。古来から日本では刀には魂が宿ると考えられ、神事などの儀式にも用いられてきました。秋篠宮妃の紀子さまが悠仁さまご出産の際に、即日「守り刀」が天皇陛下から贈られ「賜剣(しけん)の儀」が行われたことをご記憶の方も多いでしょう。五月人形の太刀には、刀に宿る魂が身を護り、繁栄をもたらすという意味がこめられているのです。

弓と太刀はただの飾りではないんですね。それぞれに意味があるので、弓・太刀は鎧兜とセットして揃えておいたほうがよさそうです。

ちなみに人形店の場合は弓・太刀や台や屏風などは好きなもの選んだり、それぞれ単体で購入することができます。「場所を取る屏風はいらないから、そのぶんサイズの大きい鎧兜に」「予算を鎧兜だけにかけて、そのぶんいいものにしたい」という選択もできます。
 

大将の兜を飾るべきか実戦の兜を飾るべきか

弓・太刀と同様に、五月人形の鎧兜は戦いのための道具ではありません。武士が儀式の際の正装に着たり、神社仏閣に奉納したものを模したのが五月人形の鎧兜なのです。「戦争の道具を飾るなんて……」と思ってしまいそうですが、武士の象徴としての鎧兜が五月人形に選ばれてきたんですね。この意味では実戦で武将が戦うための鎧兜を模したものを五月人形とするのは少々違ってきます。でも、豪華絢爛な鎧兜はキンキラして好きではないという人いませんか? ガイドも渋い美しさのある実戦的鎧兜のほうが好み。しかしこれは自分のためではなく息子のために選ぶ鎧兜です。男の子が喜ぶのはやはり豪華なものかもしれませんね。成長への願いも込めたいものです。象徴的鎧兜・実戦的鎧兜、どちらを選ぶかは実物をじっくり見て決めるとよいですね。
 

鎧兜は顔が怖いのではなくマスクが怖い

五月人形11面ぽう
この「顔」が怖い?
五月人形12面頬
「顔」は取ってもOK
さらに豆知識を。「それにしても鎧兜は怖い! 特に顔が怖い!」という人、いませんか? 兜からのぞくのは「顔」ではありません。面頬(めんぽう)と呼ばれるマスクです。これは簡単にはずすことができます。はずしたあとは画像のようにかけておいてもよし、木の棒が気になるのであればふくさを入れると格好がつきますね。もう夜中に見てギョッとすることはありません。安心して鎧を選べます。
 

五月人形は収納も考えて購入を

五月人形13櫃
漆の防虫効果がある櫃(ひつ)
五月人形は一年中出していてもよいものですが、ずっと飾っているのも飽きるもの。収納のことも考えておきたいですね。鎧が座っているのは漆塗りの箱。このような防虫効果のある櫃(ひつ)に収納すれば綺麗に保存できます。購入する時には櫃もチェックしておきましょう。もちろん、その櫃が収まるスペースが部屋にあるかどうかも肝心です。
 
 
 

ひとりにひとつが五月人形の飾り方

赤ちゃんの身を護り成長を願う五月人形の鎧兜。これはお守りとなるものなので、ひとりにひとつずつ必要とされています。パパの鎧兜を使い回しすることはできません。パパの鎧兜と息子の鎧兜をふたつ仲良く飾るのもいいですね。また、鎧兜は端午の節句の時だけでなく、ここぞという勝負の時にも飾ります。受験必勝の願掛けをして飾ったり、甲子園出場の願掛けをして飾ったり、一生の節目節目でいつでも飾り続けてよいのです。
 

五月人形の購入は実物を見てから

実物の五月人形をいくつか見ているうちに、好みのものがだんだんハッキリしてきます。五月人形は男の子のためのもの、ぜひパパが選んであげたいですね。作家名や武将名でインターネット検索し、購入したいと思うものを絞り込んでからいくつか店を回り、店頭で実物を見て決めると効率よく探すことができます。

もしガイドがこれから息子のために選ぶなら、子どもが実際に被れるサイズの兜もよいかなと思います。歴史に触れるきっかけにもなるので兜だけでなく鎧があるとよいとも思います。

これだと思う五月人形に出会って、楽しい初節句になりますように。

取材協力/人形のプーペ


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