井上広一さん
様々な分野で活躍されているアートディレクター 井上広一さん
ひとくちにデザインと言いましても、いろいろな分野のデザインがあります。今回ご登場いただく井上さんは広告やグラフィックデザインを中心にアートディレクターとして活躍されています。

井上さんとは、以前とあるトークショーでご一緒させていただいたのがご縁でおつき合いをさせていただいています。

その打ち合わせの時、井上さんはラミーのペンとシンプルなブラックのノートを颯爽と取り出してメモ取っている姿がとても印象的でした。お聞きすれば、やはり文具は大好きとのこと。

そこで、「隣の文具活用術」にご登場をいただくことになりました。

井上さんのオフィスにおじゃまし、日々デザインというお仕事の中でどんな文具をお使いになってるのかをお聞きしてきました。

井上広一さんオフィスORYELL
青山にある井上さんのオフィス。適度に照明がおとしてあって、とてもリラックスできる空間。

ガイド土橋:
では、改めて井上さんのお仕事からお話いただけますでしょうか?

井上さん:
私の仕事はアートディレクターです。もともと私は、アメリカのクリエイティブエージェンシー・ワイデン+ケネディ トウキョウに在籍していました。この会社は広告代理店なのですが、いわゆる日本の広告代理店とはちょっと違うタイプの会社です。広告代理店というと、広告を出稿する媒体をおさえるのが主なイメージがありますが、この会社では媒体の提案までは行いますが、媒体をおさえる業務は全くしていません。行っているのは、企業のブランディングを前提とした広告のクリエイティブ制作です。

私はそこで様々なクリエイティブ制作を行ってきました。当時の主なクライアントは「ナイキ」、「森ビル」、「スターバックス」などです。
井上広一さん作品
井上さんがワイデン+ケネディ社在籍時代に手がけた作品。


井上広一さん作品
メッセージが伝わってくる迫力のあるデザインだ。


ガイド土橋:
広告と言いましてもいろいろとありますよね。井上さんが主に手がけておられたのはどのような広告ですか?

井上さん:
私は主にグラフィックを中心にアートディレクションしていました。担当していたのは雑誌広告や駅に貼る大きなポスターなどです。

その他、映像制作もやっていました。 ワイデン+ケネディには、7年間在籍していまして、その後、独立して自分の会社「ORYEL(オーイェル)」を立ち上げたんです。

ORYELL
「YELLOW MEMORY」からとったという「ORYEL」という社名。
ガイド土橋:
「ORYEL」という名前はとてもユニークですね。どんな意味が込められているんですか?

井上さん:
「YELLOW MEMORY」という言葉がベースになっています。「MEMORY」のうしろの3文字、そして「YELLOW」の頭の3文字をつなげて作った私の造語です。

ある有名な戦争写真家が何かの雑誌のインタビューで、そもそも「戦争写真家」という職業はこの世にない方がいいと、その方が語っていました。

確かに戦争がなければ必要のない分野の写真家です。その言葉がとても印象的でした。そこで、私は戦争のような悲惨なことではなく、幸せを残せる仕事がしたい、そんな想いから温かみのある「黄色(幸せ、楽しさ)の記憶」という言葉が頭に浮かび、「ORYEL」という名前を作りました。

ガイド土橋:
なるほど、深い意味が込められているんですね。

独立した現在はどんなアートディレクションをされているんですか?

井上さん:
広告やグラフィックを中心にCI、ロゴデザインやウェブデザイン、映像、最近ではバッグのデザインやテキスタイルデザイン、自動車メーカーのクリエイティブ業務も昨年手がけました。

クライアントから依頼されたものを制作して納めるだけでなく、そのクリエイティブを作った後にどうするか、といったところまで踏み込んで提案させていただいています。

井上広一さん作品
井上さん独立後の作品のひとつ。これは下部を切り取って、紙を折ると心付けを包む紙になる。


井上広一さん作品
このウエアは、戦場で使用できないカモフラージュという平和をテーマとして開発したテキスタイル。カモフラージュをグラデーションにすることで、身を隠せないようになっているというメッセージ性もあるデザイン。

例えば、このクリエイティブはこの雑誌媒体に掲載した方がいい、またはこの商品はこんな店で販売するのが相応しいといった具合に、広告をデザインするだけでなく、コミュニケーションもデザインするということにもこだわっています。
ウォークマン
井上さんが学生時代に、「デザイン」というものを初めて目覚めるきっかけとなった「ソニーのウォークマン」。この独特なフォルムを目の当たりにしてデザインに興味を持ち始めたという。そのウォークマンを今も大切に持っておられる。右は今愛用されているやはり SONY のウォークマン。