プラチナ萬年筆 25G 万年筆
プラチナ萬年筆 90周年記念万年筆 25G 10万5000円
ここ数年日本の文具メーカーの間では、周年記念を迎えるところが増えている。しかも80周年や100周年といった長い歴史である。日本の文具メーカーにいかに老舗が多いことか。

そんな中、プラチナ萬年筆も来年で90周年を迎える。万年筆メーカーの周年記念と言えば、やはり、記念万年筆に期待が高まる。プラチナ萬年筆では、これまでの70周年や80周年では、レターウッドやエボナイトといった素材を使ったり、金透かしという装飾を凝らすなど、万年筆づくりの粋を集めたものを出してきた。そして今回の90周年では「25G」という限定万年筆が発売された。今回は、その万年筆を紹介しよう。

軽量さと豪華さを両立

モデル名にある「25G」とはズバリ、25gのこと。つまり重さ、というかこれはむしろ軽さと言ったほうが適切な表現になるであろう、たったの25gしかないという万年筆だ。見るからにグラマラスなボディからはその軽さは想像できないはず。コンセプトは、軽量化と豪華さの両立。軽量と豪華さとは本来矛盾することなのだが、見事にまとめ上げている。
プラチナ萬年筆 25G 万年筆
1本5~8ミクロンのカーボン繊維を折り込んで作られた素材
この軽さの立役者となったのが、カーボン素材である。では、なぜ90周年の今作でカーボン素材を選んだのか? 実は、これには同社の古い歴史が深く関わっていたのだ。

話は戦時中に遡る。その頃、世は平和産業を行うことは難しく、すでに始まっていた万年筆作りは材料の入手もままならず、困難を極めていた。そんな折、社長の知人の飛行機部品を作る会社が倒産の憂き目に陥っていたことを聞き、その会社を買い取ることになった。そこでは零戦のための部品を作っていたが、もともと万年筆を作っていた技術力がここでも活かされることになる。実際、プロペラにはイリジウムを使うことがあったそうだ。

このようにプラチナ萬年筆の長い歴史の中には、飛行機製造の一躍を担っていたという隠れた歴史があったのだ。そこで、その飛行機にちなんだ万年筆は作れないだろうかと考え、航空機の翼などに使われている軽量素材のカーボンに行き着いたという訳。

今回の25Gには、東レの高性能炭素繊維「クロスプリプレグ」がを使用。この素材はボーイング社の次世代中型機「787」にも使われているもので、直径が5~8ミクロンという極細のカーボンを1000本束ねたものを織り込み、目が詰まった繊維状を作り上げている。カーボンならではの軽量さはもちろんのこと、高強度で熱にも変形しないという特性もある。

これまでもカーボン繊維を使ったペンはあった。しかし今作は、ボディをグラマラスに仕上げている点を特筆すべきだろう。パイプ状のものに比べ、一本一本加工が伴う手が込んだものなのだ。

プラチナ萬年筆 25G 万年筆
カーボンには珍しい艶やかな質感
軽量さにこだわったため、もちろんボディに真鍮などの軸材を使うことなく、カーボンだけで仕上げられている。カーボンは、マットな質感というイメージがあるが、25Gのボディを見てみると、クリアコーティングを施したことで、美しい艶やかさをキープ。カーボンは繊維なので、その表面に何かを塗ろうとすると、どうしてもその繊維の網の目に塗料が吸い込まれてしまう。今回のものでは、5回に渡って塗装が繰り返され、この見事なまでの艶を演出している。

ボディには、このカーボン以外にメタルパーツも使用。ここにも軽量化のためのこだわりが隠されている。これらのパーツにはアルミが使われている。アルミと言えば、いわゆるアルミっぽいつや消しの質感が頭に浮かぶが、これはアルミであるのに、ツヤがある。
プラチナ萬年筆 25G 万年筆
アルミにメッキを施したメタルパーツが光沢感のあるカーボンとよく似合う
つや消しのままだと、今回のコンセプトである「豪華さ」が表現できない。ボディ同様に光沢感を出したかったのだそうだ。しかし、ここに大きな問題があった。実は、アルミは磨くと、空気中の酸素と触れて、すぐに「酸化被膜」を作ってしまうという特性を持っているため、メッキを難しくしていた。

そんな中でこれをクリアできる特殊技術を持った日本の会社が現れた。そこでは、アルミにいったん銅をかけ、磨き、さらにニッケルをかけ、磨く。そうしてようやくロジウムメッキで仕上げるという手の込んだ作業だ。これにより軽量化のアルミに光沢感を持たせ、当初の目標であった高級感を生み出すことに成功した。


次のページでは、「実際の使い心地を」をご紹介。