心して削りたくなる漆塗り鉛筆
日本で古来から親しまれている漆。その落ち着いた色あい、手に馴染む感触、そして頑丈さなど、美と実用性を兼ね備えた伝統工芸である。
五十音オリジナル 漆塗り鉛筆
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その漆を贅沢にも鉛筆に使ったものがある。この漆塗り鉛筆は、銀座で鉛筆とボールペンだけを扱うショップ、五十音さんで発案され販売されている。
鉛筆は使うほどに削ってしまうことになるのだが、そこに漆を塗るとは意外な発想だ。
各地の漆職人が一本一本手塗りで仕上げている
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漆と一口にいっても色々な種類がある。今回は代表的な3種類をご紹介したいと思う。
上から
・七々子(ななこ)塗り ・津軽唐塗り ・飛騨春慶塗り |
まず、七々子(ななこ)塗りの鉛筆。津軽に古くから伝わる漆塗りのひとつ。細かなわっかのような模様が鉛筆全体に埋め尽くされている。これは菜種の粒をつけて塗り重ねたものだそうだ。とても和を感じさせる模様だ。
次に、津軽唐(から)塗り鉛筆。よく食器などをのせるお盆などで見かける柄だ。色々な漆が塗り重ねられており、黒地の上に落ち着いた色がちりばめられている。西洋にはマーブルという模様があるが、和風のマーブル模様とも見えなくもない。
3本目は飛騨春慶塗り。個人的に一番気に入っている柄がこれだ。木目を活かしながら透明感のある漆が塗られている。根元に黒地が敷かれているので、単色であっても、とてもしまった印象になっている。この春慶塗りだけが、六角軸ボディになっている。3本の中で、特に凛々しさが感じられ、男性が持つには相応しい一本だと思う。
あまりの美しさのため、削っていない状態だと、鉛筆というよりもまるでお箸のようにも見えてしまう。削らずに飾って眺めていたいところだが、ここは鉛筆なのでやはり使ってあげるのが、この漆塗り鉛筆のためというものだ。さらに言えば、一本一本精魂込めて、手で塗ってくれた職人さんのためでもある。
ナイフで削るとゴツゴツとした仕上がりになるが、
それがまた味わい深い |
問題は、何で削るかである。鉛筆削りを使うという手もあるが、それでは、なにか味気ないような気がする。手塗りにより一本一本微妙に柄が違うように、削りもナイフで違った仕上がりにした方が、この鉛筆には相応しいと思う。
伝統工芸の漆を削って使い切ってしまうという贅沢な鉛筆、職人の方に敬意を表して最後の最後まで大切に使いたい、そんな気持ちにさせてくれる鉛筆だ。
<DATA>
・商品名:五十音オリジナル漆塗り鉛筆
七々子塗り 2,000円/1本
津軽唐塗り 1,600円/1本
飛騨春慶塗り1,600円/1本
・サイズ:長さ 178mm
・販売店:五十音にて購入できます。
・問合わせ先:五十音
<関連リンク>
グラフフォン ファーバーカステルのオフィシャルサイト(英語)
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