以前、とある雑誌の仕事で、万年筆に合う紙製品を調べた時のことだった。そのうちの1社、コクヨのご担当の方から、原稿用紙や便箋など、色々とお勧め頂いたもの中に、ひとつだけとても興味深いものがあった。帳簿用のノートである。帳簿用ノートに万年筆が最適? 怪訝に思って、その訳をお聞きしてみた。
約80年の歴史がある「帳簿」
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書く、見る、保存するというノートとしての基本性能に磨きをかけたものだから、万年筆にも最適だというのも頷ける話だ。帳簿用のノートということで、一般の我々にはあまり馴染みがないが、実は隠れた名品だったのだ。
このほどその帳簿用紙を使ったキャンパスノートが発売されたというニュースが飛び込んできた。
これは、個人的に待ってましたという感じだった。なにせ、高品質の紙が手軽に味わえるようになるのだから。
今回は、そのノートの試し書きなどを交えてレポートしてみたいと思う。
キャンパスノート ハイグレード
コクヨ キャンパスノート ハイグレード
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この10月に発売されたばかりの「キャンパスノート ハイグレード」。キャンパスノートを学生時代によく使ったという人も多いと思う。懐かしいその名残を残しつつ、現代風にリデザインされている。今回、ハイグレードということで、他のノートと区別しやすいように背ラベルがシルバーになっているのが特長。
背表紙にはシルバーがひときわ目を引く
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表紙を開いてみると、一見したところでは、いつも見慣れているキャンパスノートといった感じ。しかし、その紙を一枚めくってみると、これは違う、と「ひと目」ならぬ「ひと手」で実感することになる。指で触っただけで紙が厚いということがビシビシと伝わってくる、それほどインパクトのある厚さだ。一瞬、紙を二枚まとめてつまんでしまったのかと思ってしまうほど。
ちょっと見たところでは、
ごく普通のノート。しかし…… |
触ってみると、
その違いはすぐわかる |
冒頭でご紹介したとおり、この帳簿用紙は、一般のノートよりもかなり厚手に出来ている。それを示す基準のひとつに「紙重量」というものがある。これは1平方メートルあたりの紙の重さのことで、これが重いほど厚口と言われている。
ノートの裏には
「超厚口」の文字がある |
紙は厚くなれば、当然折り曲げた時には硬さが出てきてしまうものだ。しかし、この帳簿用紙は分厚くなっても、紙のしなやかさはしっかりと保たれている。これによりページのめくりやすさを生んでいる。ただ単に紙を厚くしたという訳ではないのだ。
しかも、再生紙を使っていないバージンパルプだけという贅沢さ。紙の劣化が起こりにくい中性紙が採用されているので、長期保存にも適している。掘り下げていけばいくほど、この帳簿用紙というのはとてもこだわって作られたものだということがわかってくる。さすが80年も愛され続けているロングセラーだ。