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多くの作家を魅了した満寿屋の原稿用紙

創業120年の原稿用紙の老舗「満寿屋」。ものを書くプロである多くの作家が認めたその実力・魅力をご紹介します。

土橋 正

執筆者:土橋 正

ステーショナリーガイド

満寿屋原稿用紙
満寿屋 原稿用紙
原稿用紙に添えられる商品名の書は丹羽文雄氏によるもの

川端康成、三島由紀夫、司馬遼太郎、横溝正史、宇野千代などなど、、枚挙に暇がないほどの多くの著名な作家に愛用されてきた原稿用紙、それが満寿屋の手づくり原稿用紙だ。

創業、明治15年(1882年)ということで、すでに120年もの歴史を持つまさに老舗の名に相応しい原稿用紙専門メーカー。実は、創業当初から原稿用紙を作っていたわけではない。もともとは進物用の砂糖をいれる和紙袋を作っていた。和紙袋を手がける会社が多くの作家を魅了する原稿用紙専門メーカーとして変貌を遂げるのには、後に満寿屋の三代目となる川口ヒロの存在なくしては語れない。当時まだ女学校を卒業したばかりだったヒロは大の文学好きで、よく早稲田にあった文学仲間や作家があつまる喫茶店に足しげく通っていた。そこで、作家の丹羽文雄氏と運命的な出会いをする。丹羽はヒロの実家が和紙袋メーカーだと聞くと、折りしも始まった第二次大戦による物資不足で入手が難しくなった原稿用紙をぜひ作ってくれないか、と依頼したのだった。そして、出来上がった原稿用紙を丹羽がいたく気に入って、そのうわさは丹羽から瞬く間に作家仲間に広まっていったという。

ここから満寿屋の原稿用紙造りの歴史がスタートしていったのだ。


こだわったのは、万年筆での書き味

満寿屋 原稿用紙
インクを気持ちよく吸い込んでくれ、
滑らかな書き味が楽しめる

原稿用紙に書く筆記具と言えば、やはり万年筆ということになる。とりわけたくさんの文字を綴る作家の方々はそうだろう。満寿屋では、万年筆で書いてもにじみがなく、滑らかに書ける紙にこだわって試行錯誤を繰り返し、最終的に行き着いたのが既成の紙を使わずに、「特漉き(すき)」と言われる満寿屋オリジナルの紙を作ることだった。しかも、その特漉きの紙は完成後、時間をかけて乾燥をさせるという手間のかけようだ。

見た目にはとても薄く、一見するとちょっと頼りなげにも感じるのだが、いざ、万年筆で書いてみると、ペン先が滑らかに進んでいくのがよくわかる。ちなみに、満寿屋の原稿用紙のパッケージの説明書きには「万年筆の保護に」と書かれている。万年筆のペン先にも負担をかけない滑らかな紙という自信のあらわれなのだろう。その説明書きどおりの書き味だった。インクのにじみもほとんど見られず、万年筆で一筆一筆書いた文字がそのまま紙の上に綴られていく。

満寿屋 原稿用紙満寿屋 原稿用紙
万年筆の保護をうたうほどの
滑らかさ
にじみがほとんど見られず、
筆跡がしっかりと残る。

さらに特筆すべき点は、書いているそばからインクがスウッと紙に吸い込まれていくことだ。吸い取り紙を必要としないこのインクの吸収の速さは、一気に書き上げる作家の方々には特に大変好評だったという。

また、昨今は環境面の配慮ということもあるが、再生紙を使うことが多くなっている。しかし、満寿屋では、書き味にこだわるためにかたくななまでに再生紙を使わない100%バージンパルプをいまなお使い続けている。

>>次のページでは、代表的な原稿用紙をご紹介
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