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靴に使う「牛革」を深く考えてみる その3B(2ページ目)

今回の「メンズシューズ基礎徹底講座」も、引き続き鞣した後の革の加工の種類について。種類は多々あるのですが、今回は中でも一番お馴染みのものと、そのアレンジとも言えなくもないものををご紹介します。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

若い頃から身近なガラス張り革!

ガラス張り革
ガラス張り革は牛革の中では最も身近なものかも知れません。学生時代にこれを用いた革靴を、誰しもが一度は履いた経験がある筈。最近は製造技術が進歩し、その欠点を少しでも緩和しようとするものも登場しつつあります。


加工に手の込んだ革の中で皆さんに一番お馴染みなのは、この「ガラス張り革」ではないでしょうか? その名は製造工程で用いる設備から来るもので、クロム鞣しを施した牛革を、平らなガラス板やホーロー加工を施した鉄板に張り付け乾燥させ、銀面をサンドペーパー等で削った後に顔料系の塗料や合成樹脂等を用いて表面を均質に仕上げたものを指します。そうでないものも稀にあるのですが、素材的には銀面を削るのが最大の特徴で、英語だとこの種の革は“Corrected Grain Leather”とより直截的な呼称となります(因みに銀付き革は英語では“Full Grain Leather”)。

銀面を削るので、例えば原皮の表面に残っているシワ模様や傷・虫刺され痕等を消し隠すことができ、それらのある部分を途中で取り除く必要が無くなるので、多少工程が増えても製品としての「革」の歩留まりを高められるのが特徴です。よって価格も銀付き革に比べれば安く、大量にかつ安定的に供給が可能。また塗料や合成樹脂で表面を覆う形になるため、新品の段階では光沢に比較的優れ、耐久性が高くお手入れに時間が掛からないのも利点でしょう。

一方、その表面は一種の厚化粧状態とも申せるので、いかにも革らしいしっとりした風合いや柔軟性には、銀付き革に比べ大きく劣ってしまうのも事実。典型的なガラス張り革で出来た靴の履きジワは正直美しさには欠けますし、靴クリームによる水分・油分の補給を行い難い革でもあるので、それが亀裂へと深刻化するケースも暫し見られ、長期的視野で見るとあまり育たず劣化するだけの感もあります。ですのでこれを用いるのは靴であれ鞄であれ、特段のお手入れをしなくても新品の段階から数年だけは一定以上の耐久性を維持したいものが中心で、学生向けやビジネスマン向けの入門編の商品にこれを用いたものが多いのは、半ば必然な訳です。

ただ、中にはガラス張り革なのに、素材感がしっかり残っているものや靴クリームの浸透性に優れお手入れが楽しめるもの、また鞣しの工程で油分を多く含ませることで柔軟性にそれほど遜色のないものも存在します。表面を覆う塗料や合成樹脂の進化次第では、今後面白い品質のものが登場してくる可能性を秘めた革でもあります。いずれにしても選択肢に不可欠な素材であることは確かで、無闇に毛嫌いすべきではない革なのは間違いないですよ!


次のページでは、表面を覆う、と言えば忘れてはならないのが……
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