半世紀近く続くサルトリア
工房で作業をするElia Caliendo氏。 |
今回はナポリのサルトリア(テーラー)を紹介しよう。ナポリ市の中心に工房を構えるSartoria Caliendo(以下サルトリア・カリエンド)は、Biagio Caliendo氏が45年前に構えた老舗で、現在は息子のElia Caliendo氏が伝統の手法を受け継いでいる。
ナポリには数多くのサルトリアがあるが、ここは日本ではまだ紹介されていないはず。工房はPiazza dei Martiriから1本わきに入った通りにあり、看板すら掲げていない。
それにもかかわらず医師や大学教授、会社経営者など、目の肥えた裕福な顧客が多い。
これから顧客に納められる、製作途中のスーツやジャケット。 |
また、このサルトリア・カリエンドはプレタポルテを一切行わないという。
長年にわたって継承してきた技術を既製スーツに反映させることが困難なのか、サルト(仕立て職人)としての誇りなのか、その理由はわからない。いずれにせよ、あまり表舞台に出てこないサルトリアである。
その一方で、熱烈な顧客のためにナポリだけでなく、ミラノとロンドンまで出向き、受注会を開催するなど、アクティブな面もある。
サルトリア・カリエンドでオーダーしたジャケット。ラペルは広めで、胸まわりがゆったりとした印象を受ける。撮影協力/Caid。商品とCaidは一切関係ありません。 |
さて、ここではスーツの具体的なディテールの説明は割愛するが、見た印象を述べておく。
縫製は要所手縫いで行われ、デザインはあくまでベーシック。胸のボリュームや、なだらかなショルダーラインは、やはりナポリ仕立て特有のリラックスした雰囲気が出ているように思う。たしかに着やすそうだ。
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