とくに、ハウススタイルはない
もうすぐ完成しそうなスーツ。衿から裾にかけてのラインが根本氏らしい。 |
よくハウススタイルという言い方をするが、リッドテーラーではそういったスタイルを積極的に提案していない。
ただ根本氏が仕立てるスーツを見ると、とてもベーシックなシルエットで、どこかを誇張したものではない。第一印象はブリティッシュスタイルにも見える。
彼の考え方は、以前おすすめガイド記事で紹介したことがある水落氏や近藤氏のスーツ作りの姿勢にとても似ている。
たとえば、クラシコイタリアやブリティッシュスーツ、アメリカンスーツを研究し、優れている点を咀嚼して自分のものにしている。
そしてその技術力を理想とするスーツ作りに生かしている点なども共通しているように思う。
シンプルなLID TAILORのタグ。内ポケットの目立たないところに付けられる。控えめで好感がもてますね。 |
お客様にブリティッシュ調のスーツを頼まれたら作りますが、そこにはボクにしか出せないスタイルというか色が反映されているはずです」(根本氏)
スーツを見るとき、とかく縫製の良し悪しをクローズアップしてしまうが、その土台作りは型紙であり生地の裁断なのである。
テーラーとしては、手仕事にこだわっていて、「プレミアム ハンドメイド(フルオーダー)の場合、ハンドメイドの工程が多く、たとえば芯地は出来合いのものではなく、芯地から作ります。
毛芯やフェルト、パッドなどはイギリスから取り寄せています。また、衿の八刺しや肩入れも手で行います」(根本氏)
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