ダークグレイ27万5000円(ビームス F) Photo:石井幸久 |
ミシンで仕立てた、最高級のスーツです
欧文表記をそのまま記せば、「ベルヴェスト」なのですが、何故か日本では「ベルベスト」と表されますね。1964年、北イタリアのヴェネト地方で創業したこのファクトリーは、クラシコ・イタリア協会に所属しています。多くの一流ブランドのスーツをOEM生産してきたことでも知られ、その技術力の高さはお墨付き。マシンメイドですが、もちろん着心地を左右する箇所はしっかりとハンドワークで縫われています。それでも、あくまでマシンメイドスーツとしての誇りに満ち溢れる、高級スーツの代名詞的存在です。一着20万円以上はしますが、マシンで20万円って、ちょっとどうなのよってぐらい高価だと思います。でもベルベストには、その値段に見合うだけの価値があると思います。
いくつかのモデルがありますが、今回はビームスがデザインディレクションに参加しているモデル「A535」をご紹介しましょう。
“丸み”による抜群のフィット感
ライトグレイ26万5000円(ビームス F) Photo:石井幸久 |
じつは20年ほど前のベルベストは、もっと直線的なデザインでした。おそらくそれが、時代が求めるスタイルだったのでしょう。それが徐々に変化していったのは、現在のモデルの開発に尽力した人々のセンスと、ベルベストの技術力の融合が高い次元で実現したからといえるのではないでしょうか。
ベルベストのスーツには、不思議なフィット感があります。もちろんパターンは既存のものですし、縫製もミシン工程を多用していますが、生地パーツをプレスによって丸みを出すことで、全体的に曲線的なフォルムとなっています。もちろん、一定の条件をクリアする高級スーツは、どれも同じ工程で仕立てているのですが、ベルベストは、他のブランドとは明確に“丸み”が一段上なのです。
“丸み”へのこだわり
ネイビーストライプ28万5000円(ビームス F) Photo:石井幸久 |
スーツの印象を左右するラペル周りも上襟のカーブ、ゴージの切り込み、下襟のカーブまで、ふんわりと曲線を描いてフロントへと続きます。このラペルの返りを中心に上下のライン(裏返った下衿の端から、フロントの裾にかけて)が、美しく曲線でつながるデザインが良いスーツの条件といわれます。ベルベストはこのライン取りが完璧になされています。
副資材もしっかりと毛芯仕立てながら、英国服のような硬さは皆無です。張りを保ちながら、コシがあるのでしなやかにフィットします。
生地の選びにも定評があります。ベルベストならではの丸いシルエットを描くのに相応しい、繊細なイタリア製生地を使い、色柄もトレンドを反映しています。今年ならちょっと明るめのブルーやライトグレイのストライプ、ベージュ系のグレイなどもいいでしょう。
次のページでは、スーツの表情を決定付ける部分をチェックします。