やがて時代が進行すると、「男の日常の正装としてのスーツ」という考え方が広まり、現在のようなかたちのスーツが生まれたといわれています。
当初はベストを着るスリーピースが主流だったようです。先に述べた、各シーンで着る服装には、共地で作られたジャケットとベストを揃えるスタイルが多かったことから「3つ揃えこそスーツの基本」というのは納得いくお話ではないでしょうか。
現代におけるスリーピースは、堅苦しいイメージが大きいかもしれません。確かにベストを省略したツーピースのほうが着るのも楽ですからね。
ベストがなければ使用する生地の量が減らせるので、値段も安く仕上がります。買う側は安く、スーツメーカーもツーピースのほうが売りやすいというのも理解できるというもの。ツーピースは、そんな市場の論理が生み出したスーツの簡易版といってもいいかもしれません。
しかし今年はスリーピース人気が復活しています。スーツの流行がクラシコイタリアからブリティッシュクラシックに移り変わるなかで、ロンドンのサヴィルロウあたりを席巻する英国的スリーピースがトレンドアイテムになっているわけです。
とはいえ昔ながらのお堅いスリーピースではありません。きちんと現代的に解釈された、モダンなスリーピースが登場しているのです。
そのあたりをご紹介していきましょう。
今風スリーピースは細身でシャープな若向けスーツです
ウエストの絞り位置を高くとった段返りの3Bスリーピース。紺無地でよりシャープな雰囲気です。エディフィスのスリーピーススーツ11万5500円、エディフィスのクレリックシャツ1万6800円、フランコバッシのタイ1万3650円、フランコバッシのチーフ4725円。以上すべてエディフィス渋谷 tel.03-3400-2932 |
オリジナルで開発した芯地を使い、仕立ては英国風でじつに構築的です。しかしながらのこの芯地は張りとコシが豊かなので着心地はとても軽やかに感じられます。肩でフィットさせ、胸周りを包み込むような着心地も英国式の特徴といえるでしょう。
先ほども述べたとおり、ウエスト位置が高くシルエットは細身になっています。肩も小さくコンパクトで日本人の体型向きです。袖が細いのは最近の特徴ですね。ウエストから腰へと描かれる直線的なラインはこのスーツをシャープで若々しい印象に見せてくれます。
そしてこれが今風スリーピースの特徴なのですが、ベストのVゾーンが深く、ともすればスーツの袷とわずかな差しかとられていない場合もあります。写真ではわかりやすいようにジャケットの前ボタンを開けて撮影していますが、実際にジャケットのボタンを真ん中ひとつ掛けにすると一見ベストの存在がわからないほどです。
ベストのVゾーンが深いと、フロントが切れ込むのでシャープでモダンなスーツに見えるんですね。ネクタイとの合わせ方もスーツの印象を左右するので、ここでのコーディネイトのように細身のタイを合わせればよりモダンさが際立つというわけです。
次のページで、もうひとつスリーピースをみてみましょう。