男の腕時計/スイスの老舗高級ブランド

ヴァシュロン・コンスタンタンの新機軸

250年以上の歴史を誇るジュネーブ屈指の老舗、ヴァシュロン・コンスタンタン。最新の話題は、自由な組み合わせで自分だけの腕時計が作れるパーソナライズを導入した「ケ・ド・リル」。その画期的な新方式とは。

執筆者:菅原 茂

自分仕様の腕時計を手に入れる贅沢

誰でも「自分仕様」へのこだわりを持っている。同一規格の量産品があふれるほど、どこかが違っていたり、もっと自分に合ったモノが欲しくなるのが人情だ。十人十色。人それぞれに個性がある限り、そうしたこだわりがなくなることは、まずない。

ヴァシュロン・コンスタンタン「ケ・ド・リル」
ヴァシュロン・コンスタンタン「ケ・ド・リル デイ/デイト&パワーリザーブ・オートマティック」のパーソナル・モデル。ピンクゴールドを主体にチタンを側面に組み合わせた例。自動巻き。642万6000円(予価)

腕時計はどうだろうか。これぞと決めた特定モデルの指名買いの場合は別として、購入にあたって、どれほど選択肢があるだろうか。好みのブランドの、ある機能付きの腕時計を候補にあげたとしても、例えばケース素材、革ストラップもしくはブレスレット、あるいは文字盤のカラー・バリエーションなどを比較検討して、その中から好みの1本を絞り込むのがふつうだ。この場合、あくまでも既成品から選ぶという範囲を出るものではないが、それがひとまず最良の選択として納得できれば、満足感は得られるだろう。

それでも完璧な「自分仕様」を求めるとなると、1点ものを特注する以外にないが、そうしたオーダーに応えるスイスの時計メーカーは、数えるほどしかない。例外的に絢爛豪華なジュエリーウォッチのような特注品もないわけではないが、これは、一般的な時計市場とはまた別の世界に属すものである。

今年のジュネーブでヴァシュロン・コンスタンタンが発表した「ケ・ド・リル」(2008年末発売開始予定)という新作は、「パーソナル・モデル」というコンセプトを打ち出し、そんな「自分仕様」を叶える新しい道を開いた点で注目に値する。しかも、世界に冠たる老舗のヴァシュロン・コンスタンタンが、顧客のニーズに合わせて開かれたシステムづくりに乗り出したのは画期的だ。かつて世界の王侯貴族や有力者たちがヴァシュロン・コンスタンタンの工房が置かれていたジュネーブの「ケ・ド・リル」(地名)を訪れて高級時計をオーダーした伝統を、現代の一般時計愛好家に向けて再現したものと呼べるだろう。

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