往年の名品を再現する新しい「ワールドタイム」

パテック フィリップの良さを問われると、著名な老舗ブランドとして確たるプレステージを備えること、機械式時計としての品質が卓越していること、飽きのこない控えめで上品なクラシック・デザインであることなど、さまざまな答えが思い浮かぶ。

時計好きに言わせれば、パテック フィリップを手に入れると、「もうこれ1本あればいい」という気分にさえなるという。だからこそ時計好きの憧れをかきたててやまないブランドである。スイスで開かれる世界最大の時計展示会バーゼルワールドでも、ブースにはたくさんの人が群がり、ウィンドーに展示されている新作や代表作をだれもが熱心にのぞき込む姿が連日見られる。究極の時計に対する人々の関心の高さは、さすがに群を抜く感がある。

パテック フィリップ「ワールドタイム」
「ワールドタイム Ref.5131」。自動巻き、イエローゴールド・ケース(直径39.5mm)。516万6000円(予価)

さて、そんなパテック フィリップの新作の中で最も印象的だったモデルをまず紹介しよう。「ワールドタイム Ref.5131」である。ワールドタイムとは、世界の時刻がすべて表示される時計。たとえば、センターの針が日本の標準時を指しているのと同時に、24時間の数字を記した回転リングの移動によってロンドンやパリ、ニューヨーク、ハワイ、香港、リオデジャネイロなどの現地時刻もわかる便利な仕組みだ。GMTやデュアルとは違い、地域をいくつも移動するような場合にいちいち時差修正をする手間がなく、旅行地域の時刻が24時間リアルタイムに表示されているので重宝する。

ワールドタイム・ムーブメント
裏面から見えるムーブメント。自動巻きは、パテック フィリップ伝統のマイクロローターを配した超薄型
パテック フィリップは、このワールドタイム機構を腕時計に1930年代後半に初めて搭載し、1950年代終わりまでさまざまな傑作モデルを世に送り出した。現代の製品にもその伝統は受け継がれている。さまざまなブランドから発表されているワールドタイムが、基本的にこのパテック フィリップのシステムを採用しているように、時計の複雑機構として屈指の傑作である。ちなみに、オークションでは、当時のモデルが数億円で落札されるという事実も、比類ない価値を物語っている。

今回の「ワールドタイム Ref.5131」の特徴はなんといっても現代の最高の技術を駆使して再現されたヴィンテージウォッチの味わい。ケースやムーブメントは既発売の「ワールドタイム Ref.5130」と同様だが、伝統工芸のクロワゾネ・エナメルで美しく描かれた文字盤の世界地図を始め、初期のモデルを踏襲する針や都市名の書体など、徹底的にクラシックな趣を追求したデザインが印象的だ。一般の時計好きにとって億単位の大金を払って手に入れることはまず不可能だし、パテック フィリップのミュージアムで見学するのが精一杯の名品が、こうして市販品化されたのはまたとない朗報だろう。

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