2/2 V8ツインターボの史上最強ハイブリッドX6 [BMW] All About

大きなSUVが無音で走る愉悦

蓄電容量2.4kWhの高圧ニッケル水素バッテリーは荷室フロア下にレイアウト。モーターのみでも最長2.6km、最高速60km/hまでの走行が可能となっている。電子制御式連続可変トランスミッション（ECVT）をベースにした2モード・アクティブ・トランスミッションを搭載する

システム出力は485psである。車重が2.5トン近くあるが、それでもすさまじい。X6には555psのX6Mなんてモデルもあるから、パフォーマンス絶対主義を貫いている。ミッションはECVTベースで、2モード制御はBMWオリジナル。低速のEVモード強化と、高速のパフォーマンス増大を狙った。もちろん4WDだが、モーターを前輪用後輪用と分けて使うわけじゃない。電池は2.4kWhのニッケル水素。

マイアミビーチのホテルエントランスにずらりと並べられたアクティブハイブリッドX6は全て、うすいブルーメタリック。いかにもエコな演出だが、日本人からしてみればハイブリッド＝ブルメタは何だかもう野暮ったい。いっそ、鮮烈なレッドメタリックかなんかにして、BMWの情熱ハイブリッドカーと宣言するくらいに意気込んで欲しかった。

0-100km/h加速は5.6秒、最高速236km/hのパフォーマンスをもつ。EUテスト・サイクルによる平均燃料消費量は9.9リッター／100km、CO2排出量は231g／kmとされ、ベースとなるX6（50i）より約2割向上している

乗り込む。4シーターの贅沢な空間。ノーマルと全く変わらない。違うのは、もちろん走りだしてから。バッテリー容量が十分であれば、まずは完全EVで走り出す。“するするするーっ”と音もなく走り出す様に慣れているはずの日本人でも、BMWの、それもこんなに大きなSUVが静かな電車のように走り出すと、むやみに嬉しくなってしまう。接近を気づかぬ通行人に「ほれほれハイブリッドやし無音で走ってまっせ」と思わず自慢を伝えたくなるほどだ。この、ちょっとした愉悦もハイブリッドが北米のセレブを魅了しているのかも?? だって、パーティ会場に乗り付けたとき、無音だったら格好いいでしょ?? ちなみに、日本で話題になっている音をあえて加える問題についてエンジニア氏に問うと、マジで驚いていた。ドイツではまだそんな議論はされていないらしい……。

乗り心地は極上。ホント、音って乗り心地の一部なんだと再認識。逆にガサガサとノイズが聞こえると、きっと心地悪いはず。もちろん、重量増の影響もあるけれど。

重くでかいクルマだけあって、3つある心臓の連携に、どこかで気づくということがない。特にアイドルストップののち、まずはモーターだけで走り出すから、そのあとエンジンがかかる瞬間の違和感がほとんどなかった。フルハイブリッドの利点のひとつ。もちろん、65km/h以下になってカットオフされるときも、微妙に震えるが気になって仕方ないというほどじゃない。

クルージング中に、上屋と下屋を別々に感じるような、国産ハイブリッド車にありがちな上下分離感はまるでナシ。重量配分の良さも効いているのだろう、別段、不自然な操縦感覚もない。やや重いX6に乗っている感覚。それだってエゴをむき出しにしてアクセルペダルを思い切り踏み、ノーマルのV8に比べて一段高い位置から始まる伸びやフラットで力強い加速を経験すれば、いっぺんに吹き飛んでしまう。実にBMWらしいフルハイブリッドカーだ。もはやエコでも何でもない気になってきたが……。まあ、それも同じことをMでやるよりはエコってことなんだけど。

ちなみに、メルセデスがMLクラスに投入するハイブリッドには2モード制御がないらしい。

日本発売は未定。きっと、高価でマーケットがないという判断だろう。日本ではハイブリッド＝買うのも維持するのも安いクルマ、というイメージだし……。でも、さらにそういうハイブリッド車が普及した暁には、従来の大衆車と高級車の成り立ちと同様に、豪華なハイブリッドカーを求める時代が来ると思うのだが。否、エコの世界で過去の思考は通用しないのだろうか……。