アウディという小宇宙における、もっともアウディ的な存在
大きなシングルフレームグリルやLEDポジショニングランプ付きヘッドライトが特徴的な、最新アウディデザインのフロントマスク。サイズは全長4635×全幅1900×全高1660mm。価格は2.0TFSIクワトロが569万円、3.2FSIクワトロは660万円となる |
こういう時代だからこそ、どうせ高いお金を出して買うのなら、既に評価の定まった定番のブランドを今さら選ぶのではなく、どこか先取性に富んだ、若々しくて軽快なイメージの、なおかつ世に知れたブランドを選んで生活に新たな彩りを添えてみたい。変化している自分をアピールしたい。やっかみ評価も避けて通りたい。
アウディは、そういう時代性にぴったりとはまっている。クルマ造りそのものは、実をいうとそれほどアグレッシブではない。かえって、コンサバなところもあるくらいだ(たとえばコクピットデザイン)。けれども、他ブランドに比べて分かり易く新しい性能や機能がほどよく散りばめられ、見栄えや乗り味の質感に個性とモダンさを持ち込んだ。要するに、クルマもブランドも、多くの日本人には“新鮮”にみえる。
今さら乗るに値する存在。そう思わせた方が勝ち、というわけである。
満を持しての登場となった、コンパクトSUVのQ5は、人気急上昇中のアウディブランドそのものが陳腐化しかねない状況の中で、“今さらアバントに乗ってもな”的潜在ユーザーをがっつり取り込めたのではないか。アウディという小宇宙における、もっともアウディ的な存在。そこには、今、多くの輸入車ファンが“アウディのようなもの”に望む要素が満ちていると思う。
まずは、SUVという、アウディの中では新しいカタチだ。
以前、同じように“今さらのアウディ”として人気を得たモデルがある。先代のオールロードクワトロ。ただし、高級過ぎたため、その輪が大きく広がることはなく、モデルチェンジの失策もあって急速に廃れてしまった。
その後、ファミリィ向けアウディの新しいカタチとしてQ7というSUVが導入されたが、さすがに日本の環境で乗るにはでかすぎた。その物理的な大きさゆえ、やむなく他ブランドのSUVを検討した人も多かったはず。
マーケットには、ランドローバーフリーランダーやBMW X3、さらにはVWトゥアレグやM・ベンツGLKといった選択肢がある。ただし、アウディファンなら一応それらを考えた上でやっぱり頃合いのモデルが見つからずA4アバントあたりに落ち着いただろうし、アウディを初めて気にかけたという人ならアウディに限らず他ブランドにも程よい選択肢がないことに気づいただろう。X3は少し古くなったし、その他でもパフォーマンスや価格面で程よいモデルが案外ないからだ。
そんな状況で投入された、小さめのSUV Q5。日本デビューすると即人気モデルとなった。今さら買ってみたいアウディ筆頭、というわけである。
Q5の詳細は次ページで