BMW/BMWの車種情報・試乗レビュー

走りを磨きつつ“先祖帰りした”7シリーズ(3ページ目)

5代目となり先々代の流れに戻ったスタイリングが与えられたBMWのフラッグシップ、7シリーズ。最先端技術によるさらなる軽快な走りで、ドライバーをかき立てる大型スポーツサルーンに仕上げられていました。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

最先端技術により進化したクラス唯一の軽快な走り

BMW7シリーズ
750には最高出力407ps/最大トルク600Nmを発生する4.3リッターツインターボ、740には最高出力326ps/最大トルク450Nmの3リッターパラレルツインターボを搭載。直噴技術や過給器などにより効率化が図られ、3リッターエンジンで従来モデルと比べ出力を約7%向上させつつ燃費を約12%改善させている

そんな内外装の先祖帰りとはウラハラに、メカニズムや電子制御は最先端バリバリだ。高効率エンジンや軽量化(ボディパネルはリアフェンダーとトランクを除きアルミニウム)によって炭酸ガス排出量を劇的に抑えたのみならず、ダイナミック性能とコンフォートさの両立を目指した各種電子制御システムがものすごい。ナチュラル走り派には、BMWお前もか!だろうけれど。

低速時にタイヤが前後逆位相に動くインテグラル・アクティブ・サスペンションの採用がまずひとつめの注目点。後輪が最大3度動き、回転半径は最大70cm小さくなる。日本のような狭い道路環境が多いところでロングボディを扱う際には、とても重宝する。また、高速(80km/h以上)時では同位相に切れる(スカイラインのハイキャスみたいな感じ)ため、スムースで安定感あるレーンチェンジはもちろん、横揺れ減による後席の快適性アップにも役立っている。

次はダイナミック・ダンピング・コントロール。タウンユースからワインディングロード、高速道まで、道の種類や車速を問わず、また後で説明するドライビングモードにもかかわらず、驚くほど快適でフラットな乗り味を貫き通せるわけは、全ホイールの垂直方向の動きをセンシングして2.5ミリセカンドごとにデータ分析し、それをもとに各ホイールのダンピングを瞬時に調整しているから。難しいけど、とにかくダンパー制御が細かくて偉い、と。

もうひとつが、今流行りの装備のモード別ドライブ制御のダイナミック・ドライブ・コントロール(DDC)。ダンピング、ギアシフト、アクセルレスポンス、パワステアシスト、ステアリングといった特性を、コンフォート、ノーマル、スポーツ、スポーツ+というモードに合わせて変化させるもの。スポーツではシャシー系をノーマルにドライブ系をスポーツに、といった個別のチョイスも可能。コンフォートを選ぶと、かったるいほどにエンジンレスポンスは抑えられてシフトチェンジもおっとり&早めだから、かなりエコドライブ。乗り心地も明らかに柔らかめ。真逆のスポーツ+ではエンジンがうなりを上げるほど高回転まで引っぱり、ステアリングフィールははっきり重い。特に、オプションのダイナミック・ドライブ(アクティブスタビライザーによるシャシーコントロール。ああ、ややこしい!)装着車では、ボディが一層引き締まって、いい意味で“コイツは5シリーズちゃうか!?”と思ってしまうほど軽快な走りをみせた。このクラスでこんな走りをみせてくれるのは、やっぱり7だけ!

逆にダイナミック・ドライブなしの標準車では、それなりにクルマの沈み込みがあって、ボディサイズを感じさせる。好みの問題だと思うが、ロングボディならボクはクルマがしっかり沈みこんでくれる走りの方が重厚感もあって好き。

エンジンは、面白いことに3リッターでパフォーマンス的には十分。かえって、4.4リッターの同じエンジンを搭載するX6ほどの過激さがなかった。7シリーズのキャラに見合った制御をしているということだろう。

心配なのは、何度も言うようだけど、先祖帰りした点。もともと7シリーズにそれほど保守的なユーザー数のない(たとえばSクラスなんかと比べて)日本市場では、先代のあの特異な感じが新しいカスタマーを引っ張った気がする。ボクも、Sはよう買わんけど前の7なら乗ってみたいと思ったもの。このコンセプトチェンジが吉と出るか凶と出るか。中身が素晴らしいだけに、気になるところ。
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