満足度を分かってもらう術をもたない“V”
サテン仕上げのメッシュグリルに輝くキャデラックのエンブレム |
強烈なスーチャー音を聞きながら、追い越し加速を楽しんでいたとき、ふと思った。このクルマは、もはやアメリカ車のイメージを逸脱している……。それは果たして良いことか、悪いことか、はなはだ微妙である。
このパッケージングが欲しければ、BMWやM・ベンツの高性能モデルを狙うという選択肢もある。あえて、“分かりづらい”クルマに乗るというツウな(奇特な?)人もいるだろうが、大半の人はM3やC63AMGに目がいくだろう。私だって、お値段1000万円近くと聞けば、C63の走りが頭をよぎる。
パフォーマンス的には、M5やE63も十分ターゲットゾーンだが、残念ながらそこまでのステータスもない。CTSは、国産高級ブランドと同様に、ひとつ下のクラスの価格で、ひとつ上の性能を狙うクルマ、という位置づけだが、Vになってもそれは変わらないのだ。
C63に乗っていれば、フツウのCクラスとすれ違う分だけ、優越感を覚える。全M・ベンツとならぶたびに、注目を浴びるかも知れない。AMGであるということは、それだけ所有者の自尊心をくすぐる。それが、ブランドビジネスというものだ。
キャデラックCTS-Vには、残念ながら、それがまだない。自分が感じた満足度を分かってもらう術がないのだ。結果、CTSもCTS-Vも、自分に相当な自信を持つ、人の評価を気にしない、真に自立心にとんだユーザーの選ぶ対象となってしまうのだった。私は、そういう人を、CTSを街で見かければ、逆に羨望のまなざしで見ることだろう。「この人、クルマがすっげえ好きなんだなあ」、と。
メッシュグリルやパワードームをもつエンジンフードを始めスポーティに仕上げられたエクステリア。専用デザインの19インチアルミホイールを装着 |