“本質的に変わらない”ことを教えてくれた古い系
日本に存在する“ウルフカウンタック”の取材時にて |
9月は、既に取材を終えていた夏のモンテレーウィークエンドや、イギリスクラシックカー事情といった、古い系の原稿が目立っている。中でも、ウルフカウンタックの原稿は、自分で書いていても相当に盛り上がった記憶がある。
『カナダの石油王も、そして日本のカリスマ俳優も行ったであろうエンジンスタート。キーを捻り軽くアクセルペダルをあおるだけで、ダラーラチューンのV12はいとも簡単に目覚める。キャブセッティングの行き届いたクルマは、最低限の儀式しか必要としないもの。少なくとも、難しいもんじゃない。
慎重に走り始めた。低速での動きは、LP400風ではなく、後のLP400Sに近い。けれども、鈍重さがなく、LP400の長所でもある軽やかさが残っている。シフトレバーの操作フィールも余分な動きがなく気持ちいい。
400とも400Sともまるで違うのが、加速時のエンジンフィールである。ギアレシオの違いもさることながら、吹けが明らかに軽く、しかも力が漲っている。この感覚は、少なくとも4バルブ以降にならないと得難いもので、日頃フィールの悪さやパワー不足にぼやく400系オーナーには垂涎のエンジンと言っていいだろう。』(ロッソ誌)
カナダの石油王ウォルターウルフは、都合4台のカウンタックを発注したと言われている。有名なオーバーフェンダー&ウィング仕様のLP400改は2号、3号で、赤い前者が日本に存在している。
'57年に登場したM・ベンツ300SLロードスター |
2ペダルツインクラッチミッションのPDKを搭載したポルシェ911。写真は911タルガ |
『ある程度走ってから得られるドライブフィールには、このクルマがまず間違いなく現代でも通じる完成度を当時既に誇っていたことがみてとれるのだった。 だからと言って、私は現代のクルマが何も進化していないと言い切るつもりはない。機械的な進化は確かにあるのだ。むしろ変わらないのは、人間の方であって、機械を操って楽しいとか、嬉しいとか、気持ちいいという、そんな官能フィールの方が昔の人と変わらず我々には残っている。電子制御やハイパワーや仕掛けられた演出を楽しんでいるのではなく、すべからく機械的なものを操作することに乗り手は本能的にエキサイトしてしまうのだ。』
クルマというものは結局、電気回り/コンピューター回りの進化があっただけで、本質的には何ら変わっていない、否、むしろ人の関与を抑え込もうとしている分だけ、違うものへ進化したのかも知れない。それにしても、半世紀まえのベンツには驚かされた。ぶっちゃけ、50年以上も前にこんなクルマを造っていたメーカーには、到底敵わないよな、と思った。
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